| 健康と医学の話 |
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アレルギー性ぜんそくなど気道過敏症の原因となる体内物質を作る細胞を、理化学研究所がマウス実験で突き止めた。ヒトにも同じメカニズムがあると考えられ、症状を抑えたり発症を予防する新薬の開発につながると期待される。17日付の米実験医学誌に発表した。
理研によると、国内のアレルギー性ぜんそくの患者は約300万人。慢性化すると、気管支拡張薬やステロイドなどを用いる対症療法が中心となり、根本的な治療法は確立していない。発作的なぜんそくや、せきを起こす直接の原因物質は分かっているが、これらがどの細胞で、どう作られるのかは不明だった。
研究チームは、マウスのさまざまな免疫細胞で遺伝子の働き具合を調べ、肺に多く分布するナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)にだけ出現するインターロイキン(IL)−17RBというたんぱく質に着目。人為的にNKT細胞を欠損させり、IL−17RBの働きを止めたマウスでは気道の炎症が起こらないことを確認し、IL−17RBを持ったNKT細胞が気道過敏症を引き起こす「悪玉細胞」だと結論づけた。
小児がんの一種で、治療が難しい神経芽腫の原因遺伝子を東大医学部の研究グループが発見した。この遺伝子がつくる酵素の働きを抑えることで、新たな治療法の開発が期待できるという。16日付の英科学誌「ネイチャー」(電子版)に発表した。
神経芽腫は4歳以下の患者が9割を占める乳幼児疾患。国内で年間約1000人が発症し、患者の約3割は治療が難しい。24年前に関連遺伝子が見つかったが、有効な治療法の開発には結びついていない。
研究グループは患者215人のゲノム(全遺伝情報)を分析。そのうち18人で、細胞の増殖にかかわる遺伝子が変異したり、通常の数十倍にコピーされて増えたりして、神経のもとになる細胞をがん化させ、神経芽腫を引き起こしたことを突き止めた。
詳しく調べたところ、この遺伝子がつくる酵素が異常に活性化していることが判明。酵素の働きを阻害すれば、治療が難しい患者の約3割で症状の改善が期待できるという。
小川誠司特任准教授は「この酵素は肺がんと関係があり、阻害剤の研究が進んでいる。神経芽腫の治療にも生かせるかもしれない」と話している。
さまざまな細胞に変化する可能性を持つ「人工多能性幹細胞」〈iPS細胞〉を、ウイルスを使わずに作ることに、山中伸弥・京都大教授らが、マウスの細胞を使った実験で成功した。従来は、ウイルスの一種「レトロウイルス」の使用が必要で、細胞に発がんなどの遺伝子異常をもたらす危険が指摘されてきた。ウイルスなしで作れたことで、今後iPS細胞から作った細胞を移植する際の、患者に対する安全性向上につながるとみられる。
10日、米科学誌『サイエンス』電子版に論文が掲載される。
iPS細胞を作るには、皮膚細胞など基になる細胞に4種類の遺伝子を導入する必要がある。従来はこの4遺伝子をレトロウイルスの内部に組み込み、ウイルスごと細胞に注入していた。このウイルスは、細胞が元々持っている遺伝子の集まり〈染色体〉に入り込む。この際に細胞の遺伝子に異常が生じ、がんなどが起きる心配があった。
山中教授と沖田圭介・京大助教らは、レトロウイルス(retrovirus)の代わりに大腸菌などが持つ環状の遺伝子「プラスミド」(plasmid)を使ってiPS細胞を作ることに成功した。プラスミドは一般に染色体内に入らず、遺伝子異常を起こす心配がないとされる。
4遺伝子のうち、細胞作成に欠かせない3遺伝子を一つのプラスミドに、作成効率を上げる1遺伝子を別のプラスミドに組み込んだ。これらをマウス胎児の皮膚細胞に4回に分けて注入すると、実験開始から25日目にiPS細胞ができた。染色体を調べ、外から遺伝子が入った形跡がないことを確認した。
今後はヒトの細胞で同様の方法でのiPS細胞作成を目指す。山中教授は「iPS細胞を患者の治療に使うために重要なワンステップだ」と話している。
BSE(牛海綿状脳症)の病原体である異常プリオンが、外部から感染しなくても、遺伝子の変異によって牛の体内で作られ、発症につながる例もあることが、米農務省国立動物病センターなどの研究で分かった。
研究したユルゲン・リヒト現カンザス州立大教授は「BSEがないと言われているどの国でも、この病気は発生しうる」と指摘、専門誌プロス・パソジェンズに11日発表した。
遺伝性のBSEが見つかったのは、米アラバマ州で2006年に発症した当時約10歳の雌牛。
牛肉の輸入再開をめぐる日米交渉が続く中、感染源が注目されたが、同省などの疫学調査では手がかりがつかめなかった。同センターで遺伝子を解析した結果、異常プリオンを作る変異が初めて見つかった。人間にも同じタイプの変異が知られ、遺伝性のクロイツフェルトヤコブ病(CJD)を引き起こすという。
鉄粉を混ぜて培養した細胞を、強力な磁石で骨の欠損部分に集めて骨や軟骨を再生する治療法を広島大学病院の越智光夫病院長(整形外科)の研究グループが開発した。体外に取り出した人の軟骨での再生実験に成功しており、臨床試験を経て、数年後の実用化を目指している。
越智氏らが開発した手法は、体内から取り出した骨髄細胞をもとに、骨や軟骨、筋肉などに変化する間葉系幹細胞を使う。MRI(核磁気共鳴画像装置)で造影剤として使われている鉄粉(直径10ナノメートル、ナノは10億分の1)と、特殊な薬剤を幹細胞の培養液に入れると、一晩で鉄粉を内側に取り込んだ幹細胞ができあがる。
この幹細胞を注入する際に、体外から強力な磁石を使って骨や軟骨の欠損部分に集める。定着した幹細胞は、3週間程度で軟骨や骨へと変化し、欠損部分を補ったという。磁石を当てる時間は欠損部分の大きさによるが、1〜6時間程度。
これまでにブタを使った動物実験のほか、人間から取り出した軟骨を使った実験でも、約1平方センチメートルの欠損部分を再生できた。鉄粉はやがて細胞から排出され、赤血球中で酸素を運ぶヘモグロビンに吸収されるという。
鉄粉や薬剤は、いずれもすでに医療現場で使われているもので、副作用の心配などは低いといい、広島大病院では、早期の臨床試験を目指している。
研究グループの1人、小林孝明医師は「注射と磁石を使うだけなので、手術に比べて患者の負担が小さく、何度でも繰り返し行うことができ、大きな効果が見込まれる」としている。
幹細胞を使った再生医療は国内外で研究が進んでいるが、再生させたい場所に幹細胞を定着させる技術や、幹細胞の変化を正しく導く手法に課題が残っている。
プラスチック製の食器などから溶け出す化学物質ビスフェノールA(BPA)によって、脳の神経組織の形成が妨げられることが、サルを使った米エール大などの実験で分かった。
米科学アカデミー紀要電子版で発表した。
ネズミでは知られていた現象だが、内分泌や脳の構造が異なる人間でも起きるのかどうか、安全性をめぐる議論の焦点となっていた。
異常が現れたのは、記憶や学習をつかさどる海馬などの、「スパイン」とよばれる構造。体内のホルモン「エストラジオール」の働きで形成が促進され、神経細胞同士の信号のやり取りに重要な役割を果たす。ところが、アフリカミドリザルにBPAを4週間与え続けた結果、エストラジオールの働きが妨げられ、領域によってはスパインの数が半分以下に減少した。
脳内で新しく作られる神経細胞が、空間を記憶するのに重要な役割を果たしていることを、京都大ウイルス研究所などのチームがマウスを使った実験で突き止めた。人間でも同様の働きがあるとみられ、新しい神経細胞を増やす薬を開発すれば記憶力低下を防止できる可能性があるという。31日の米科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス(電子版)に発表した。
チームは、新しくできた神経細胞に色が付くようマウスの遺伝子を操作。観察の結果、餌がある場所など空間について記憶する「海馬」の一部で新しい神経細胞が作られ、1年間で総量が約15%増加したことが分かった。
一方、円卓に12の穴を開け、1カ所だけ下に箱を置いて場所を記憶させる実験では、正常なマウスは1週間後に位置を覚えていたのに対し、新しい神経細胞ができないよう操作したマウスは区別が付かなくなっていた。
人間でも、老化により新しい神経細胞ができにくくなることが知られている。メンバーの影山龍一郎・同研究所教授(分子生物学)は「新たな場所の記憶を保つ上で古い神経細胞は役に立たず、新たな神経細胞が必要なことを示せた」と話している。
ラットの脳細胞から出る電気信号によって、障害物を避けながら動くロボットの開発に成功したと、英レディング大が14日発表した。
ロボットは、人やコンピューターなどの助けなしで動いたという。
研究グループは、ラットの胎児から採取した脳細胞を培養して増やし、脳細胞が発する電気信号を検出できる装置に組み込んだ。二輪走行するロボットは、この電気信号を無線で受けて動く仕組みで、ロボットに積んだセンサーが障害物を検知すると、ロボット側から無線で送られる信号が脳細胞を刺激する。
ロボットは最初こそ障害物に接触していたが、障害物検知の信号で脳細胞が“学習”したとみられ、避けて動けるようになったという。
同大システム工学部のケビン・ワーウィック教授(自動制御学)は「培養した脳細胞が初めてロボットを操ったというだけでなく、脳が経験を蓄積して学習する仕組みの解明につながる成果だ」と話している。
視覚の情報を脳へ効率よく伝えるために必要なたんぱく質を、大阪バイオサイエンス研究所チームがマウスで発見した。
動体視力の優劣に関係しているとみられることから、素早い動きが特徴の人気アニメキャラクター「ピカチュウ」をもじって「ピカチュリン」と名付けられた。
網膜色素変性症などの治療につながる可能性がある。20日付の科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス電子版で発表する。
古川貴久・第4研究部長らは、マウスを使って、光を感じる網膜の視細胞ができる際に働く遺伝子を解析し、ピカチュリンを発見した。視細胞から脳へ信号を送る神経への「つなぎ目」だけに存在するという。
ピカチュリン遺伝子を壊したマウスでは、正常なつなぎ目ができず、信号の伝達時間が約3倍かかった。速い動きに対する眼球の反応も遅くなり、動体視力にかかわっているらしい。古川部長は「イチロー選手のように動体視力に優れた一流の運動選手は、ピカチュリンの働きに違いがあるのかもしれない」と話している。
理化学研究所(理研)は7月14日までに、国内だけでも1000万人以上の患者がいると推定されている変形性関節症(OA)の原因遺伝子「DVWA」を発見した。理研を中心に杏林大、三重大、国立病院機構相模原病院、中国の南京大などとの国際共同研究による成果で、理研では「DVWAの発見によって分かったOA発症の新たな経路を詳しく調べることで、より正確な病態の理解が進み、新しいタイプのOA治療薬の開発が可能になる」としている。
OAは、関節の軟骨が変性したり、消失したりすることで、関節の痛みや機能の障害を起こす。骨や関節の関係では、最も発症頻度が高い疾患の一つで、有病率は年齢とともに増加し、70歳以上では30%以上の人がかかっているという統計もある。
このOAに関し、理研ゲノム医科学研究センターの骨関節疾患研究チーム(池川志郎チームリーダー)が、日本人特有のSNP(一塩基多型)をゲノム全体で調べたところ、あるSNPと膝の変形性関節症(膝OA)が強く相関していることが分かった。しかし、このSNP周辺のゲノム上には、既知の遺伝子が存在しなかったため、未知の遺伝子を捜した結果、軟骨に特異的に発現する新たな遺伝子を見つけ、DVWAと名付けた。
膝OAの日本人962人と、そうでない1726人を対象に解析した結果、DVWAが造るタンパク質に「反応する」あるSNPが膝OAに最も強い相関を示した。また、南京大の協力を得て、膝OAの中国人417人と、そうでない413人で同様の解析をしたところ、このSNPとの強い相関が示された。
さらに、DVWAの機能などを検討した結果、DVWAタンパク質が「チュブリン」という軟骨細胞の細胞骨格を構成するタンパク質と結合していることが判明。膝OAと強い相関を示すSNPによるDVWAタンパク質とチュブリンとの結合力への影響を調べたところ、OA患者に多いSNPに由来するDVWAタンパク質では、結合が低下することを突き止めた。
チュブリンの減少はOAにつながることから、DVWAは軟骨細胞の細胞骨格の制御を通じて、OAの病態に関与していると考えられるという。
卵子や精子のもとになる生殖細胞の誕生を制御する遺伝子を、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の斎藤通紀チームリーダー(38)らがマウスを使った実験で発見し、米専門誌「ネイチャー・ジェネティクス」の電子版に12日、発表した。生殖細胞ができる仕組みの全容解明につながり、不妊治療などに応用できる可能性があるという。
生殖細胞の起源となる「始原生殖細胞」に現れる遺伝子群を解明していたチームは、この遺伝子群のなかの「Prdm14」という遺伝子に注目。Prdm14を欠損させたマウスは、外見上は異常なく成長したものの、オス、メスとも精子や卵子ができなかった。
正常な始原生殖細胞は、体を構成するあらゆる細胞に分化する「多能性」を持つが、実験結果などから、Prdm14が多能性の獲得に不可欠な遺伝子であることも分かった。
生殖細胞の誕生にかかわる遺伝子については、チームが「Blimp1」と呼ばれる別の遺伝子を発見している。今回の研究で、生殖細胞が2つの遺伝子の影響を受けて誕生することが初めて明らかになった。
マウスの受精卵が着床するまでの数日間、自分自身のたんぱく質を分解して栄養にしていることを、東京医科歯科大のチームが発見した。魚や鳥と違い、ほとんど養分を持たない哺乳類の卵子の生き延び戦略を解明した成果で、体外受精の成功率向上などにつながる可能性もある。3日発行の米科学誌サイエンスに発表した。
ヒトをはじめ動物や植物の細胞には、飢餓時の栄養分の自給自足や細胞内の浄化のため、自分自身のたんぱく質を分解する「オートファジー」(自食作用)と呼ばれるリサイクル機能がある。出生直後や絶食時などに、全身の細胞で活発化することが知られていた。
水島昇・東京医科歯科大教授(分子細胞生物学)らは、生きた細胞でオートファジー(autophage)の様子を観察する新手法を開発。マウスの受精卵を凍結保存しようとした際、偶然、受精直後の卵子でもオートファジーが活発化することを見つけた。
オートファジーが働かない受精卵は、たんぱく質の合成量が通常の7割程度に落ち、生育できずに着床前に死んだ。哺乳類の卵子にはほとんど栄養分がなく、このリサイクル機能がなければ必要な器官を作る材料がなくなるためと考えられるという。
水島教授は「今後、オートファジーのような卵細胞内のたんぱく質の代謝機構が不妊に関係しているのかどうかを解明したい。体外受精卵の培養方法の改善などにつながる可能性もある」と話している。
一部の人々の体内では、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に対して驚くほどの抵抗力がつく突然変異が起きている。そして研究者たちは、そのような抵抗力を誰にでも持たせるための方法をついに見つけたのかもしれない。
ウイルスは細胞に入り込んで乗っ取るが、細胞に入り込むには手がかりが必要だ。HIVは、T細胞の表面を覆っている、CCR5と呼ばれるタンパク質を手がかりにして侵入する(T細胞は主要な2種類の白血球細胞のうちの1つで、身体がウイルスと戦うのを助ける重要な役割を担っている)。
1990年代に、不特定多数の相手と性的な関係を持ち、HIV陽性の相手と関係があったにもかかわらず感染しなかった少数の同性愛の男性たちが、科学者たちの関心を引いた。彼らのほとんどに、細胞が通常のCCR5タンパク質を作らないようになる突然変異が起きていた。
この知識を得た科学者たちは、CCR5の産生を妨害するか、CCR5の形を変えることにより、HIVが乗っ取りを試みる最初の段階でCCR5を手がかりにできなくする方法をいくつか開発した。このやり方は、レスリングの試合前に髪の毛を切るのとよく似ている。相手がつかめる部分を1つ減らすというわけだ。
ペンシルベニア大学のCarl June教授らのチームが開発した最新の防御策は、『ジンク・フィンガー・ヌクレアーゼ』と呼ばれる高度に操作されたタンパク質を使い、一部のT細胞からCCR5の遺伝子を取り去るというものだ。
これにより、T細胞はCCR5を作り出す方法を失い、HIVが入り込むのはほぼ不可能になる。June教授の論文は、6月29日(米国時間)に『Nature Biotechnology』のウェブサイトで発表された。
June教授が行なったテストは、ヒトではなくマウスを対象にして、培養したT細胞を使っているため、手放しで喜ぶのはまだ早い。この手法がヒトでもうまく機能するかどうか明らかになっていないからだ。
理論の上では、AIDS専門医が、感染者からT細胞をいくつか取り出し、遺伝子に手を加え、再び患者の体内に戻す、という手法が考えられる。体内に戻された抵抗力のあるT細胞は、ウイルスをものともせず盛んに増殖し、勢力を伸ばす。この方法で体内のウイルスを取り除くことはできないが、AIDS患者のT細胞の数を維持することで、二次感染に対する抵抗力や健康を保つ能力が高まるはずだ。
人など脊椎(せきつい)動物の祖先は、これまで考えられていたホヤ類ではなく、ナメクジウオの仲間であることを、日米英など国際チームが突き止めた。ナメクジウオの全遺伝情報(ゲノム)を解読し、ヒト、ホヤなどと比較したもので、成果は19日付の科学誌ネイチャーに掲載される。
哺乳(ほにゅう)類や魚類など背骨を持つ脊椎動物は、5億2000万年以上前に、背骨の原形である棒状組織「脊索(せきさく)」を持つ脊索動物から進化したと考えられている。脊索動物には脊索が尾側にある尾索動物のホヤ類と、頭部から尾部まである頭索動物のナメクジウオ類があるが、詳しい進化の過程は分からなかった。
研究チームは、約5億個の化学物質(塩基)からなるナメクジウオのゲノムを解読、約2万1600個の遺伝子を発見した。すでにゲノム解読されているホヤ、ヒトと比較した結果、脊索動物の中でナメクジウオが最も原始的であることがわかった。
これは、脊椎動物がナメクジウオ類から直接進化したことを裏付けるもので、ホヤ類を祖先と見る従来の説を覆す結果となった。
研究リーダーの一人である京都大学の佐藤矩行教授(動物学)は「ダーウィン以来の懸案だった脊椎動物の起源が初めてはっきりした」と話している。
細胞が卵子や精子(生殖細胞)になるのに必要な遺伝子の働きを、理化学研究所(神戸市)の斎藤通紀(みちのり)・哺乳(ほにゅう)類生殖細胞研究チームリーダーと栗本一基特別研究員らがマウスの細胞を使った実験で解明した。この遺伝子は細胞が一般的な細胞(体細胞)に変化するのを防ぐブレーキ役をしていた。さらに、生殖細胞にとって重要な、どんな細胞にも変化できる能力(多能性)の維持に関係していた。
15日付の米科学誌「ジーンズ・アンド・デベロップメント」に論文が掲載される。
斎藤さんらは、生殖細胞形成に重要だとみられた遺伝子「Blimp1」を、人為的に欠損させた受精卵を作り、正常な受精卵と比べた。
その結果、正常な受精卵は受精後6〜8日で、一部の細胞が生殖細胞に向かって変化し始めた。
一方、Blimp1のない受精卵では、生殖細胞になるはずの細胞で、皮膚や骨などの基になる体細胞への変化を促す遺伝子が次々と働き出した。多能性維持に重要な別の遺伝子「Sox2」は働かなかった。
Sox2は、京都大の山中伸弥教授らがつくった人工多能性幹細胞(iPS細胞)に必要な遺伝子の一つ。斎藤さんは「Blimp1はヒトにもある。何らかの共通の働きをしている可能性がある」と話している。
膵臓に3種類の遺伝子を入れるだけで、血糖値を下げるインスリンを分泌するベータ細胞を作り出すことに、米ハーバード大のダグラス・メルトン教授らのグループがマウスの実験で成功した。
11日、当地で始まった国際幹細胞研究学会で発表した。様々な組織の細胞に変化する胚性幹細胞(ES細胞)や新型万能細胞(iPS細胞)を使わずに簡単につくることができ、ベータ細胞が破壊され、インスリンを作れない1型糖尿病の治療への応用が期待される。
メルトン教授らは、遺伝子操作でベータ細胞を作れないようにしたマウスの膵臓に、ウイルスを運び役にして膵臓に関連した遺伝子を注入。1100種類を試し、受精卵から膵臓ができる過程で働いている3遺伝子がベータ細胞を効率よく作るのに欠かせないことを突き止めた。
たばこと肺癌の関係はよく知られているが、酒を飲む量が多いとさらに発症リスクが高まることが30日までに、厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター部長)の大規模疫学調査で分かった。非喫煙者ではこうした関係がみられなかった。
飲酒と肺癌については多くの研究があるが、たばこの影響が大きいため、はっきりした結果は得られていない。
研究班は1990年と93年、東北から沖縄まで全国10地域で、40〜69歳の男性約4万6000人の生活習慣などを調査。2004年まで追跡し、この間に651人が肺癌になった。
飲酒量で「飲まない」「時々飲む(月1〜3回)」と、1日当たり「1合未満」「1〜2合」「2〜3合」「3合以上」に分け、喫煙者と非喫煙者を別々に解析。喫煙者では、飲む量が多いほど肺癌発症率が高くなる傾向があり、「2〜3合」「3合以上」では時々飲む人の1.7倍だった。
ビタミンB群を食事で多く取る人は心筋梗塞になりにくいことが27日までに、厚生労働省研究班(主任研究者=津金昌一郎国立がんセンター部長)の大規模疫学調査で分かった。どれか1つだけでは効果がなかった。
研究班は1990年と95年、岩手、秋田、長野、沖縄の4地域で、40〜59歳の男女約4万人の生活習慣を調査。約11年の追跡期間に、男性201人、女性50人の計251人が心筋梗塞などの虚血性心疾患になった。
食事内容からビタミンB6、B12、葉酸の摂取量を算出してそれぞれ5群に分け、喫煙や肥満、ビタミン剤摂取などの影響を除いて発症リスクを比較。その結果、いずれも摂取量が多いとリスクが低い傾向がみられた。
心筋梗塞に限るとより顕著で、最も少ないグループに比べ、最も多いグループは葉酸で約4割、B6、B12で約5割低かった。
また、摂取量が多いか少ないかの組み合わせでも検討。3つすべて少ない人は、すべて多い人の2倍以上のリスクだった。1つだけ多くても他の2つが少なければ同様に高リスクで、特にB6が少ないと、B12と葉酸が多くても2倍以上だった。
研究班は、これらを満遍なく、特にB6を多く含む食品を積極的に取ることが、心筋梗塞の予防につながる可能性があるとしている。
血管の疾患などに関与しているたんぱく質が、筋肉のエネルギー消費を調節する働きを持っていることを、東大循環器内科の永井良三教授らのグループが突き止めた。別の小さなたんぱく質との結合・分離によってスイッチを切り替えるように調節することも分かり、25日付の米医学誌ネイチャー・メディシン電子版に発表した。
こうしたメカニズムが明らかになったのは初めて。研究グループは「肥満やメタボリックシンドロームの新たな治療薬開発につながる」としている。
「KLF5」と呼ばれるこのたんぱく質は、さまざまな遺伝子の機能を調節しており、これまでに血管や心臓の疾患、がんなどへの関与が知られている。
DNAの並び方に1か所違いがあると、胃癌になる危険性が約4倍高まることが、国立がんセンターの吉田輝彦部長らの研究で分かった。
この違いは、胃で働くたんぱく質の量に関連しているとみられる。胃癌発症の仕組み解明に役立つとともに、リスクの高い人が喫煙を控えることなどで、予防につながると期待される。ネイチャー・ジェネティクス電子版に19日発表する。
遺伝情報が収められているDNAは、4種類の塩基が対になって並んでいて、時折、人によって異なる並び方が現れる。吉田部長らは、こうした塩基配列の個人差を約9万か所選び、胃癌の半数を占める未分化型胃腺がんの患者188人について、病気でない752人と比較した。
その結果、ある1か所の違いが、発がんリスクを4.2倍高めることが分かった。韓国人を対象にした研究でも、約3.6倍と同様の結果が得られた。
日本人の約6割が、リスクの高い並び方になっているという。
脂っこい食事を不規則に取る生活を続けると、コレステロールの代謝を担う肝臓の「体内時計」が異常となり、同じ食事内容でも規則正しく取った場合に比べ、血中コレステロール濃度が大幅に上がる可能性が高いことが分かった。名古屋大大学院生命農学研究科の小田裕昭准教授らがラットの実験で確認し、5日までに日本農芸化学会で発表した。
この研究は、「規則正しい食生活をしないと不健康になる」メカニズムの解明が目的。小田准教授は「頭の睡眠リズムは日光の影響が大きいが、身体は食事に合わせようとする。交代制勤務などの場合でも、1日3、4回、できるだけ普段と同じ時間に食事した方がいいのでは」と話している。
研究チームは、コレステロールが高くなるよう配合した餌を、6匹ずつ2グループのラット(夜行性)に与えた。いつでも食べられる状態にしたグループは、主に夜になって起きたときと、明るくなって寝る前の2回、餌を食べた。別のグループには、同じ内容と量の餌を4分の1ずつに分け、昼夜を通して6時間ごとに与えた。
その結果、昼夜構わず餌を食べることになったラットは、肝臓からのコレステロール放出量が増え、血中濃度が100ミリリットル当たり約200ミリグラムから約270ミリグラムと、1.3倍上昇。肝臓でコレステロールが代謝されると胆汁酸として排出されるが、ふんに含まれる量も減っていた。
がん細胞の転移は、生命活動に必要なエネルギーを合成する働きを持つミトコンドリアDNAの突然変異が原因の一つであることを、島根大医学部生命科学講座の本間良夫教授らの研究グループが発見し、4日、米科学誌サイエンス電子版に発表した。転移のメカニズムが解明されたことで、がんを抑制する効果的な治療法の開発につながると期待されている。
千葉県がんセンター、筑波大との共同研究で、マウスのがん細胞を使用して実験。転移能力の高いものと低いものの2種類のがん細胞を用意し、双方の核DNAとミトコンドリアDNAを交換した。するとできた細胞の転移能力は、ミトコンドリアDNAがもともとあった細胞の転移能力と一致。転移のしやすさは、核DNAではなく、ミトコンドリアDNAに左右されることが判明した。
ヒトの乳がんと子宮頸がんの細胞を使った実験でも、同じ仕組みを確認した。
さらにマウス実験では、ミトコンドリアDNAの塩基配列を解析。ミトコンドリアDNAが突然変異を起こすとエネルギー合成力が低下して活性酸素の産出量が増加。この活性酸素が核DNAに影響し、転移能力の獲得につながっていた。
また抗酸化剤処理で活性酸素量を抑制すると転移能力が抑制されることも突きとめた。今後島根大を中心にヒトのがん細胞での検証を進め、がんが転移する可能性の診断法や転移能力獲得を抑制する方法を研究する。本間教授は「この発見はがんの転移をコントロールする大きな手がかり。検証を重ねれば新たながん治療法の開発につながる」としている。
肺癌を発症しやすい体質かどうかに影響する遺伝子の個人差を発見したと、欧米の3研究チームが3日付の英科学誌ネイチャーなどに発表した。このうち、政府が国民の全遺伝情報(ゲノム)調査に積極的なアイスランドの医薬品会社ディコード・ジェネティクスを中心とするチームは「この個人差が喫煙量とニコチン依存度にも関係する」と指摘。研究成果は肺癌の早期診断や新たな禁煙補助剤の開発に役立つと期待される。
いずれも肺癌患者と健康な人を比較したり、喫煙者とたばこを吸ったことがない人を比べたりする調査を行った。しかし、喫煙量との関係については、米テキサス大などのチームは弱いとし、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)などのチームは認めなかった。さらに大規模な調査での解明が望まれる。
この個人差は15番染色体の「長腕」と呼ばれる部分にあり、肺胞などにあるたんぱく質「ニコチン性アセチルコリン受容体」を構成する「CHRNA3」などの遺伝子がかかわる。2カ所のDNA塩基の種類が、肺癌患者では特定のタイプである割合が高かった。
ディコード社などのチームは、アイスランド国民約5万人にたばこを吸う本数を質問し、このうち喫煙者約1万1000人のゲノムを解析。その結果、ヘビースモーカーでは、15番染色体長腕の特定位置の塩基が「グアニン」より「チミン」である割合が高いと分かった。さらにオランダとスペインを加えた3カ国で肺癌患者約1000人と健康な人約3万2000人を調査したところ、チミンの場合は発症リスクが3割高かった。
血中の総コレステロール値が低い人は死亡リスクが高いことが28日までに、浜崎智仁富山大教授、大櫛陽一東海大教授らの研究で分かった。特に男性の場合、総コレステロール値が高いほどリスクが低くなる傾向がみられた。
大櫛教授らの別の疫学調査では、「悪玉」とされるLDLコレステロールで同様の傾向がみられた。
4月から始まる特定健診では、LDLが一定値以上だと受診勧奨となるが、浜崎教授は「コレステロールを悪者にする説はもともと米国から来たもの。米国は心臓疾患や肥満が多く、体質が違う。不必要な人まで薬物治療の対象になる」と懸念している。
同教授らは、コレステロールと死亡率に関する国内の疫学調査を検索し、「5000人以上を5年以上追跡」などの条件で5本の文献に絞り込み、延べ約17万3500人分を「メタ分析」という手法で解析した。
電気製品などへの応用が期待される筒状の炭素ナノ材料「カーボンナノチューブ」を投与したマウスに中皮腫ができたことを、国立医薬品食品衛生研究所などが確認した。厚生労働省はナノ材料の安全対策や製造現場での予防策について報告書をまとめる方針。
カーボンナノチューブは、発がん物質のアスベストと形状が似ていると指摘されている。ただ、アスベストをマウスに吸入させる実験では中皮腫が発生しにくいため、研究チームは腹腔(ふくくう)内に注射する方法を採用した。
発がん性をより早く調べるため、がん抑制遺伝子「p53」を欠失させたマウス(生後9〜11週)を4群に分け、粒径が平均約100ナノメートル(ナノは10億分の1)で長さの異なるカーボンナノチューブ、アスベスト(青石綿)、炭素ナノ材料で球形の「フラーレン」、何も含まない溶液を注射。カーボンナノチューブについては、長さが5マイクロメートル以上のものの影響を観察した。
カーボンナノチューブ群では、84日目に初めて腹腔内に中皮腫が見つかり、その後の180日間で16匹中14匹にできた。青石綿でも18匹中14匹で見つかったが、フラーレンと溶液の群では腫瘍(しゅよう)は見られなかった。
腫瘍の近くにはカーボンナノチューブや青石綿が沈着。研究チームはカーボンナノチューブの細長い形状やマウス体内での分解しにくさなどが影響したと分析した。東京都健康安全研究センターも正常ラットで実験し、同様の結果を得た。
同研究所の菅野純・毒性部長(毒性学・病理学)は「今後の製品開発では、労働者が工場内で吸い込むことなどがないよう、大量生産前の現在の段階から予防策をとることが重要だ」と指摘する。
アルツハイマー病に関与するたんぱく質の一つが、老化に伴う記憶障害の原因になっていることを、理化学研究所の高島明彦アルツハイマー病研究チームリーダーらがマウスを使った実験で確認し、15日付の学会誌に発表した。このたんぱく質が脳内に蓄積すると、アルツハイマー病の原因になる神経細胞の変質(神経原線維変化)をもたらすが、早期に発見できれば、発症予防が期待できるという。
人間の脳は老化に伴い、記憶の形成にかかわる嗅内野(きゅうないや)という部位に「過剰リン酸化タウたんぱく質」が蓄積し、神経原線維変化が発生。その後「ベータアミロイド(Aβ)」と呼ばれる別のたんぱく質により脳の広い部位に神経原線維変化が拡大、アルツハイマー病に至る。
研究チームは、ヒトのタウたんぱく質を作るマウス(タウマウス)を遺伝子操作でつくった。学習、記憶行動と神経細胞の活動を調べたところ、若いタウマウスでは通常のマウスとの違いはなかったが、老齢では嗅内野の神経原線維変化が起きていなくても、記憶能力が極端に低下していた。
老齢タウマウスの嗅内野を詳しく調べると、神経細胞同士のつながり(シナプス)の減少が判明。タウたんぱく質が神経原線維変化とは別に、シナプスを減少させて記憶障害を起こしていることが分かった。
神経原線維変化は元に戻せないが、タウたんぱく質は薬剤で害を与えない状態に変化させることができるため、早期の発見により、記憶障害の改善やアルツハイマー病への進行を防げる可能性があるという。
アカゲザルの体細胞と卵子から作ったクローン胚(はい)を使い、さまざまな細胞に分化する能力を持った胚性幹細胞(ES細胞)を作成することに、米国のオレゴン国立霊長類研究センターなどの研究チームが成功し、14日付の英科学誌「ネイチャー」電子版に発表した。霊長類のクローン胚からES細胞が作られたのは世界で初めて。ヒトでの再生医療、難病治療などへつながる成果として注目を集めそうだ。
研究チームは、アカゲザルの卵子の核を取り除き、そこへ体細胞(線維芽細胞)の核を移植してクローン胚を作った。304個の卵子から、最終的に2個がES細胞に成長。神経細胞などに分化させることができ、ES細胞の特徴を備えていることを確認した。
これまで哺乳(ほにゅう)類では、マウスでクローン胚由来のES細胞が作られていた。霊長類では、04〜05年に韓国・ソウル大の黄禹錫(ファンウソク)教授(当時)らの研究チームがヒトの体細胞を使って作成に成功したとの論文を発表したが、後に捏造(ねつぞう)が明らかになった。
しかし、この騒動によってサルなどヒト以外の霊長類でのES細胞作りが注目された。国内でもカニクイザルを使った研究でクローン胚を作り、基になる胚盤胞までは完成していたが、ES細胞には成長させられていなかった。
ヒトのクローン胚からES細胞ができれば、その人と同じ遺伝情報を持つ臓器・組織を作り出せるため、拒絶反応のない再生医療の切り札になると期待されている。
医薬基盤研究所霊長類医科学研究センターの山海直・主任研究員は「黄教授の論文捏造発覚以降、各国のチームがサルでのクローン胚由来ES細胞作りに取り組んでいた。日本のチームも作成を目指していたので残念だ。大きなブレークスルーで、再生医療への期待は高まるが、ヒトでの応用にはまだ時間が必要だ」と話している。
体内の“掃除屋”細胞と言われる「マクロファージ」が不要になった細胞を取り除く際、アレルギーなど免疫にかかわるたんぱく質がセンサーのように要不要を見分けていることを、京都大医学研究科の長田重一教授らが突き止めた。ぜんそくやアレルギー、アトピーなど自己免疫疾患の解明や治療法の開発に役立つ成果という。25日付の英科学誌ネイチャーに発表された。
古くなり不要になった細胞が死ぬと、有害な物質が放たれて周囲に炎症が起きないように、マクロファージが細胞を丸ごと取り込んで分解する。死んだ細胞の表面にリン脂質の物質が現れるが、マクロファージがどのように目印を見分けるかは未解明の部分が多かった。
マクロファージの表面にあり、この目印と結合するたんぱく質を探したところ、免疫にかかわる「Tim1」と「Tim4」が当てはまると判明。これらを抗体で働けなくすると、マクロファージは細胞を取り込めなくなり、Timたんぱく質が死細胞を取り除くために必要だと分かった。
研究グループの大阪大医学系研究科、内山安男教授は「マクロファージがうまく掃除できないことと、自己免疫疾患など免疫の病気が関係すると分かった。治療法を考えるうえで重要な発見だ」と話している。
腰痛や座骨神経痛を招く椎間板ヘルニアの原因遺伝子の一つを、理化学研究所と慶応大、富山大、京都府立医科大の研究チームが7日までに発見した。この遺伝子のDNA塩基配列が特定のタイプの場合、そうでない人に比べて約1.4倍、発症しやすくなる。研究成果は発症の仕組みの解明や新薬開発に役立つと期待される。
この遺伝子は、軟骨組織だけにある「11型コラーゲン」を生み出す遺伝子の一つで、「COL11A1」と呼ばれる。日本人の椎間板ヘルニア患者の協力を得て、この遺伝子のDNA塩基配列を調べたところ、特定の部位の塩基の種類がチミンの人は、シトシンの人に比べ、11型コラーゲンを生み出す働きが3分の2程度に低下し、約1.4倍発症しやすくなることが分かった。
シベリア北部の永久凍土から発掘された1万2000年前から5万年前のマンモス10頭の毛から、細胞小器官ミトコンドリアのDNAを抽出し、高い精度で解読することに成功したと、米ペンシルベニア州立大などの国際研究チームが28日付の米科学誌サイエンスに発表した。
従来の骨や筋肉からDNAを抽出する方法に比べ、毛は周囲が硬いケラチンに包まれ、細菌などのDNAの混入が少なく、劣化が進んでいないのが特徴。絶滅した動物の他の種との関係や進化過程をより正確に解明できるほか、DNA解析の対象がこれまでに成功したマンモスやマストドン、飛べない巨鳥モアなど以外にも広がると期待される。
米保険大手カイザー・パーマネンテが27日発表した調査結果によると、女性が毎日飲酒した場合、乳がんになるリスクが拡大する傾向が確認された。酒の種類を問わず、健康に良いとされる赤ワインでも発生率が高まった。
調査は約7万人(うち2829人が乳がん発病)を対象に実施。ワインなどを毎日3杯以上飲む女性の乳がん発生率は、ほとんど飲まない女性より30%高かった。同社研究員は「毎日3杯以上の飲酒が乳がん発生率拡大につながるのは、毎日1箱以上の喫煙が肺癌発生率拡大につながるのと似た関係にある」と警告した。
毎日1、2杯飲酒する女性の乳がん発生率も10%高かったため、家族に乳がん患者がいる場合などは飲酒習慣に注意が必要だと助言した。
飲酒と乳がんリスクの関連性は指摘されてきたが、血圧低下などの効果がある赤ワインは例外との意見もあった。しかし、今回の大規模調査で、赤ワインやビール、ウイスキーの間に違いはなく、アルコール摂取量が発がん率を左右する傾向が分かった。ただ、リスクを高める原因は未解明という。
千葉大学大学院医学研究院の落合武徳前教授を中心とする研究グループが、医学生物学研究所(名古屋市)と共同で、血液検査で早期がんを発見できる新たな診断法を開発した。厚生労働省は食道がん、大腸がん、乳がんについてこの診断法を使った検査薬を承認し、今月、検査薬が発売された。年内にも保険が適用される見込みで、人間ドックなどでの普及が期待されている。
C型肝炎ウイルス(HCV)が細胞内で増えていく仕組みを、下遠野邦忠・京都大名誉教授(現慶応大教授)らのチームが初めて解明した。HCVが持つたんぱく質が、細胞内にある脂肪の塊「脂肪滴」を利用して新たなウイルスを作っていることが分かった。肝臓に脂肪が増えるとHCVも増えるため、下遠野名誉教授は「余分な脂肪滴の蓄積を防ぐ薬剤ができれば、HCVが原因の肝疾患の進行を抑制することが期待できる」と話している。
HCVに感染すると、高い確率で慢性肝炎や肝硬変などになる。肝臓がんで死亡した人の約8割が感染しているといい、感染すると肝臓に脂肪がたまりやすくなる傾向があることも分かっていた。チームは、培養した肝細胞にHCVを感染させ、ウイルス形成の仕組みを調べた。
HCVは、自らが持つ10種類のウイルスたんぱく質のうち「コア」と呼ばれるたんぱく質が、水と結合しにくい性質を利用して脂肪滴に近づき、脂肪滴の膜に張り付く。他のウイルスたんぱく質はそこに引き寄せられ、脂肪滴の周辺で新たなウイルスを作っていた。ウイルス形成の足場として、脂肪滴が使われているとみられる。
成果は肝臓脂肪症の仕組みの解明や、コアが脂肪滴に近付くのを防ぐ薬剤の開発など、HCVの新治療につながるという。研究結果は26日(ロンドン時間)、科学誌「ネイチャー・セル・バイオロジー」電子版に掲載された。
世界保健機関(WHO)は23日、2007年の「世界健康報告」を発表、1967年以降、毎年1種類のペースで未知の病気が発生しており、一世代前には存在しなかった病気が少なくとも39種類見つかったことを明らかにした。
同報告によれば、これらの新種の病気は、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)や鳥インフルエンザ、エボラ出血熱、エイズウイルス(HIV)など。
また、同報告はグローバル化に伴い人やモノの移動が激増する中、世界各地で過去5年間、約1100件の伝染病の流行があったことも指摘した。
既存の疾患が抗生物質への耐性を強める傾向もある。WHOは特に、既存の薬が効きにくいタイプの結核の流行を懸念している。
ウイルスや細菌などの病原体が、口や鼻から感染するのを防ぐ機能を高める新しい乳酸菌を発見したと、熊本県立大と大塚製薬の共同研究グループが14日、札幌市で開かれた日本消化器関連学会で発表した。
かぜやインフルエンザなどの予防対策に利用が期待される。
南久則・同大教授らの研究グループは、様々な乳酸菌をマウスに飲ませて、気道などの粘膜上で病原体の感染を防ぐ免疫物質の分泌量を調べた。その結果、ある種の発酵茶から採取した乳酸菌を飲ませると、IgAという免疫たんぱく質の分泌量が、飲ませなかったマウスよりも約6倍増えた。その乳酸菌を、健康な20歳代の被験者7人に21日間飲ませて、唾液(だえき)に分泌されるIgAの量を調べたところ、摂取前よりも明らかに分泌量が増えていた。
重症の未熟児網膜症の新生児に対し、病状が悪化する早期に眼球手術を行い、8割以上で失明を回避することに、国立成育医療センター(東京都世田谷区)の治療チームが成功した。
失明の原因となる網膜剥離(はくり)を防ぐ手法で、日常生活に困らない視力が望めるなど治療効果が生まれている。
未熟児網膜症は、光を感知する網膜を養う血管が十分に成長せずに生まれ、その血管が、目の奥にある硝子体で増殖、収縮し眼球組織に変性を起こす病気。網膜剥離で失明することも多く、特に、血管増殖が約1週間で一気に進む重症タイプは、ほぼ全員に重い視力障害が残る。年間約1000例に及ぶ小児の失明原因の30〜40%がこの病気だ。
皮膚や髪を作る細胞にメラニン色素が輸送されるのを妨げる酵素を、理化学研究所と東北大の共同研究グループが見つけた。メラニン色素は紫外線で遺伝子が傷つくのを防ぐが、しみやそばかすの原因にもなる。輸送を妨害して肌の美白を保ったり、促進して白髪を減らす方法の開発に役立ちそうだ。米国の生化学専門誌(電子版)に、論文が掲載される。
メラニン色素は、皮膚に紫外線が当たると表皮の内側の細胞で合成され、膜に包まれた袋に蓄積される。この袋が、皮膚や髪を作る別の細胞に輸送されると肌や髪が黒くなる。
研究グループの福田光則・東北大教授らは2年前、「Rab27A」と呼ばれるたんぱく質が輸送に不可欠なことを解明した。「Rab27A」は、働いて輸送を促す場合と働きを失う場合を繰り返し、輸送を正常に保っていると考えられたが、仕組みは分からなかった。
グループは今回、たんぱく質の働きを失わせる可能性があると考えられた酵素40種類を、マウスの培養細胞に1種類ずつ加えて実験した。
すると、ある一つの酵素を加えた場合には、メラニン入りの袋が細胞の中心部から広がらなくなった。袋は通常、中心付近で作られて周辺に輸送されるが、酵素が輸送を妨げたとみられる。グループは酵素を「Rab27A―GAP」と名付けた。
福田教授は「今回の酵素は、人間でもメラニンの輸送を妨げるとみられる。輸送を促進する酵素も見つけたい」と話している。
理化学研究所と大阪大学の研究チームは、細胞内において、亜鉛の濃度変化が、病原菌などから体を守る仕組みにかかわる免疫応答をコントロールするシグナルとして使われていることを発見した。亜鉛濃度によって情報を伝えるしくみの発見が生命科学全般に新しい発見を促す可能性もある。
亜鉛は、体に不可欠な微量金属の一つで、欠乏すると免疫不全や味覚障害などの異常が生じることが知られていた。しかし、カルシウムのように、濃度変化が細胞内のシグナル伝達にかかわっていることは知られていなかった。
体内では、「樹状細胞」と呼ばれる免疫細胞が、一度侵入した病原菌などの異物の断片を蓄積しておき、同じ種類の異物を見つけると成熟・活性化して、異物を攻撃する細胞である「T細胞」に病原菌など相手の特徴と断片を教えると、攻撃的になってやっつけにいく。
研究グループは、樹状細胞のセンサー部である「トール様受容体(TLR)」が刺激されてから、樹状細胞が成熟・活性化する過程において、細胞中の亜鉛濃度を蛍光標識を使って調べた。
その結果、樹状細胞の成熟に伴って細胞内亜鉛レベルが減少していた。また、細胞内の亜鉛濃度をわざと下げてやると、TLRの刺激をしなくても樹状細胞が活発になって、T細胞も攻撃的になった。
さらに、亜鉛濃度の調整には、樹状細胞内で亜鉛を運搬する役目をもつ「亜鉛トランスポーター」が関与していることも突き止めた。
この成果は、米科学誌ネイチャー・イムノロジー(免疫学)のオンライン版に日本時間の7日、掲載される。
先進諸国で失明の主因とされる加齢黄斑変性の原因は活性酸素とするマウスでの実験結果を、慶応大の坪田一男教授(眼科学)らが11日、米科学アカデミー紀要(電子版)に発表した。
加齢黄斑変性は、網膜の中心部の黄斑という部分が加齢とともに異常を起こし、視力が低下する病気。
活性酸素が原因という仮説を裏付ける結果で、研究グループの今村裕講師は「体内の活性酸素の過剰生産を制御するなど、より根本的な治療が考えられるのではないか」と話している。
加齢黄斑変性は通常のマウスにはみられないが、活性酸素を除去する酵素が作れないよう遺伝子操作した生後10カ月以上のマウスでは、約86%に現れた。
牛海綿状脳症(BSE)の牛を食べて発病するとされる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病は、感染から発病までの潜伏期間が、長い人で50年を超す可能性があるとの推定を、英ロンドン大などのチームがまとめ、24日付の英医学誌ランセットに発表した。
従来は長くて20年程度との推定もあったが、チームは長期的な監視が重要と訴えている。
根拠は、BSEやヤコブ病と同様に異常プリオンが原因とされるクールー病。死者への敬意を表す手段として人の脳を食べる習慣があったパプアニューギニアの一部に残る疾患で、潜伏期間は平均12年とされてきた。
脊髄などの中枢神経系が損傷して、約1週間後に損傷部位に集まる細胞「アストログリア」に、神経細胞の損傷拡大を防ぐ働きのあることを慶応大医学部の岡野栄之教授や中村雅也講師らがマウスを使った実験で突き止めた。
アストログリアの集積を早期に促すことで脊髄損傷を抑える新たな治療法につながると期待される。19日の医学誌ネイチャーメディシン電子版に発表する。
中枢神経系が損傷すると、炎症が広がったり、細胞の“自殺”が起きたりして損傷部位は拡大する。
約1週間が経過すると、アストログリアが損傷部に集まることが知られていたが、その機能は不明だった。
眠りを引き起こす働きが知られるホルモンの一種「プロスタグランジンD2」(PGD2)の受け皿となる脳表面のたんぱく質(受容体)を作用させなくすると、睡眠時間が短くなることを、大阪バイオサイエンス研究所(大阪府吹田市)の研究グループがラットを使った実験で確認した。居眠り防止薬の開発にもつながる成果だとして、18日から京都市で開かれる国際生化学・分子生物学会議で発表する。
PGD2は、脳の周囲を覆うくも膜から分泌され、くも膜と脳の間を流れる脳脊髄(せきずい)液中に微量に存在する。研究グループはこれまでに、PGD2をラットの脳に投与すると、受容体からアデノシンという神経伝達物質が発生し、それが睡眠を誘発することを突き止めている。しかしどうすれば睡眠を抑制できるかは確かめられていなかった。
実験では、脳のうち受容体が集中して存在する「前脳基底部」という部位に、受容体を作用させなくする薬の水溶液を6時間にわたり微量に投与し続けた。すると、薬の濃度が高いほど睡眠時間が短縮。ラットが通常睡眠に入る昼間で、睡眠時間は通常1時間あたり約40分だったのが20〜25分まで減少した。
同研究所の裏出良博・第2研究部長は「PGD2はこれまで強制的に投与して眠気を引き起こすことは知られていたが、今回の実験で、結果的にPGD2が自然な睡眠にも関与していることが分かった」と話している。
2カ国語を話せるバイリンガルの人は、言語を切り替える際に大脳の奥にある尾状核という部分が活発に働き、スイッチになっている可能性があることが京都大と英国、ドイツの研究機関などの国際チームの研究で分かり、9日付の米科学誌サイエンスに発表された。
研究チームの国立精神・神経センター神経研究所の花川隆室長(脳科学)は「多言語を習得するための脳のメカニズムを知る第一歩になる」と話している。
研究チームは、英語とドイツ語を話せる2グループと、日本語と英語を話せる1グループで実験。2つの単語を「違う言語」「違う意味」「似たような意味」などさまざまな組み合わせで見せ、脳のどこが活発に働いたかを調べた。その結果、言語が切り替わった時は、どのグループでも脳の左右にある尾状核のうち、左側が活発に活動していた。
米製薬セルジーン社は25日、米食品医薬品局(FDA)が、同社の内服薬「サリドマイド」を血液のがんの一種である多発性骨髄腫の治療薬として承認したと発表した。
サリドマイドは、1950−60年代に日本など各国で、睡眠薬や胃腸薬として妊婦が服用し、赤ちゃんに深刻な薬害を引き起こした。米国では98年にハンセン病の合併症に対する治療薬として承認され、多発性骨髄腫の治療用としても医療現場での使用が先行していたが、今回、副腎皮質ホルモン「デキサメタゾン」との併用療法が公式に認められた。
インドネシアで家族や親類計8人が鳥インフルエンザ(H5N1型)に感染したとみられ、うち7人が死亡した事例に対し、各国の感染症専門家が懸念を強めている。家族の集団感染としては過去最大規模で、「ヒトからヒト」への感染が複数回起きた可能性が26日までに明らかになったからだ。
世界保健機関(WHO)の調査では、ヒトの世界で大流行が心配されるようなウイルス変異は検出されていない。たまたま条件がそろって家族内で感染が広がった「特異例」との見方がある一方、ウイルスがヒトに定着する兆しである可能性も否定できず、今後の調査に注目が集まっている。
集団感染は北スマトラ州カロ県の農村地帯で起きた。
世界的に流行しているエイズウイルス(HIV)は、アフリカのカメルーン南東部に生息するチンパンジーから人間へ感染した可能性の高いことを、欧米とカメルーンの研究チームが初めて突き止めた。
各地のチンパンジーが保有しているウイルスを比較して分かった。治療薬やワクチン開発につながる成果と期待される。
米科学誌サイエンス電子版に25日、掲載される。
HIVの起源は、チンパンジーに感染するサル免疫不全ウイルス(SIV)といわれていた。研究チームは、カメルーン国内の10か所でチンパンジーのふんを採取。5か所のふんからSIVの遺伝子を検出した。分析の結果、遺伝子の構造(塩基配列)には地域差があり、同国南東部の2か所で検出されたSIVが、世界的に流行しているHIV(Mタイプ)と酷似していた。
将棋やチェスなどで瞬時に数手先まで読むといった「先読み」の能力に、脳の前頭前野が深くかかわっていることが、東北大大学院医学系研究科の虫明(むしあけ)元(はじめ)教授(神経生理学)らのチームの動物実験でわかった。
問題解決の手順を先読みする仕組みが解明されれば、複雑な問題を一瞬で解決する人工知能や、認知症の治療法の開発などに役立つという。
18日付の米科学誌「ニューロン」電子版に掲載される。
虫明教授らは、コンピューターの画面上の迷路を、3回のレバー操作でマークを移動させてゴールさせるようニホンザルを訓練、その際の前頭前野の神経活動を調べた。
紫煙の漂う室内で育った赤ちゃんは、親がアレルギー体質だった場合、1歳までにアレルギー性鼻炎を発症する割合が3倍に増えることが、米シンシナティ大(オハイオ州)の研究で分かった。
同大のG・レマスターズ教授らが、欧州の専門誌「小児アレルギー・免疫学」電子版に17日発表した。
調査の対象としたのは、親がアレルギー体質の乳児633人。喫煙状況も含めて各家庭の室内環境などを調べ、1歳までに現れた呼吸器系症状との関連を分析した。
その結果、室内での1日の喫煙本数が20本以上という家庭の乳児は、家族が全くたばこを吸わない家庭の乳児に比べて鼻炎の発症が倍増、特にアレルギー性鼻炎の発症は3倍に上った。また、かびの繁殖が目立つ家では、かびが全く見られない家に比べ、アレルギー性鼻炎が3倍、鼻や耳の炎症を伴い、抗生物質の投与を受けるほどの風邪にかかる割合は5倍に達した。
星の材料を再現した氷状の混合物に宇宙を飛び交うのと同じ高エネルギーの放射線を当て、アミノ酸のもとになる複雑な有機物を作り出すことに小林憲正・横浜国立大教授(分析化学)らの研究グループが成功した。アミノ酸は生命活動を支えるたんぱく質を構成する物質で、生命の素材が宇宙で作られたとするシナリオを裏付ける成果だ。千葉市で開催中の日本地球惑星科学連合大会で17日に発表する。
研究グループは、宇宙で星が形成される場となる暗黒星雲を構成するメタノール、アンモニア、水の混合物を液体窒素で氷点下約200度に凍らせた。暗黒星雲は同約260度と極低温のため、その状態に近づけた。
放射線医学総合研究所(千葉市)で、この氷状物質に高エネルギーの放射線を照射すると、数時間で有機物が生じた。有機物の分子はアミノ酸の約20倍の重さがあり、水に溶かすと数種類のアミノ酸ができた。この有機物は熱や放射線に強く、アミノ酸が単独で存在するより壊れにくいことも分かった。
地球の生命は約38億年前に海で誕生した。従来は、紫外線や雷などの作用で大気から生じたアミノ酸などが生命の素材になったとされていたが、最近は、原始大気はアミノ酸が生じにくい組成だったとする研究も多い。
研究グループは、宇宙空間で生成された有機物がいん石やすい星に取り込まれて地球に運ばれ、海で進化して生命が誕生したというシナリオを提案している。
実際に、いん石やすい星からは複雑な有機物が見つかっており、小林教授は「宇宙で生成される有機物の具体的なイメージが初めてつかめ、地球外で生命の素材が作られたことを示すことができた」と話している。
体内の水分量維持など、さまざまな働きを持つホルモン「バゾプレッシン」が血圧を維持する仕組みの一部を、京都大薬学研究科の輿水崇鏡講師、辻本豪三教授らのグループが解明し、米科学アカデミー紀要電子版で9日発表した。
バゾプレッシンは脳下垂体から分泌されるホルモンで、腎臓では水を細胞に再吸収させるよう働いている。血管を収縮させる働きもあり、高血圧症や心不全などとも関係していると考えられているが、実態は良く分かっていない。
辻本教授らは、細胞膜でバゾプレッシンと結びついて信号を伝える受容体の一つ「V1a」に着目。V1aが生まれつきないマウスで血圧の変化するか調べたところ、循環血液量が1割程度低下して血圧が低くなっており、バゾプレッシンは血管収縮以外の仕組みで血圧を調整する働きがあることが分かった。このマウスでは副腎皮質ホルモンの分泌が低下しており、血圧が下る原因の一つではないかという。
また、薬剤などで人工的に血圧を下げさせると、それに反応して心拍数が増えるが、V1aのないマウスは通常のマウスに比べ、心拍数の増加が少なく、心拍調節機能にも障害が生じることが分かった。これにより、バゾプレッシンは血圧の維持に深く関与していることが示された。
辻本教授は「バゾプレッシンは心臓機能の低下で血圧が低下した時の治療薬として効果があることを示せた。海外では心不全などの治療薬としても使われ始めているが、副腎への影響など副作用に注意しなければいけないことも分かった」と話している。
生命活動の基本となるDNAからRNAへの遺伝情報の読み取りに関し、理化学研究所などの国際チームは、RNA生成の起点となるDNA上の“スイッチ”が、従来考えられていたよりも5〜10倍も多いことを突き止めた。
28日付の専門誌ネイチャー・ジェネティクス電子版に発表する。
一つの遺伝子に複数のスイッチが存在することになり、たんぱく質の作られ方も様々。これが高等動物の複雑な生命活動の原動力である可能性があるという。
国際チームはヒトとマウスの全遺伝情報を解析、RNA生成を指示するスイッチがどこにあるかを探した。人間では、19万513個を確認。これまで一つの遺伝子には、1個程度のスイッチしかないと考えられていたが、実際は1遺伝子に平均5個以上のスイッチが存在していた。
年齢とともに脳細胞は減るが、頭をよく使うと脳細胞が死なないのはなぜか。このメカニズムを解明することに、東京大の緑川良介特別研究員と広川信隆教授(分子細胞生物学)らが成功した。脳細胞が死ぬのを食い止めたり、神経の再生が可能になるかもしれないという。21日発行の米科学誌「セル」で発表する。
広川教授らは、細胞内で物質を運ぶ役割を担う「KIF4」というたんぱく質に着目し、マウスなどで調べた。あまり使われない神経細胞では、損傷した遺伝子の修復にかかわる酵素「PARP1」と結合し、酵素の活性が失われ細胞死を導くことが分かった。一方、よく使う神経細胞では、細胞の活動によりカルシウムが多く流れ込み、酵素が変形(リン酸化)してKIF4と結合しないため細胞死を免れていた。
広川教授は「神経細胞の生死の鍵はKIF4が握っていることが分かった。細胞内の“運び屋”という本来の役割とは違う機能は驚きだ」と話している。
食欲をコントロールする際に重要な働きをする脳内のたんぱく質を、米コロンビア大糖尿病センターの北村忠弘・助教授、ドミニコ・アッシリ教授(ともに内分泌学)らのチームがラットを使った実験で突き止めた。
人でも同様の仕組みがあるとみられ、糖尿病や肥満などの生活習慣病の治療につながる成果。専門誌「Nature Medicine」電子版に発表した。
脳の視床下部には、食欲を促進する物質(Agrp)と抑制する物質(Pomc)がある。レプチンというホルモンが、Agrpを減らしPomcを増やすことで食欲を抑えることがこれまでに知られているが、北村助教授らは、「Fox01」というたんぱく質に注目。このたんぱく質が働いているときは、レプチンを投与しても食欲は衰えなかった。
一方、ラットに半日間絶食させても、「Fox01」の働きを止めておくと、食事量は増加しなかった。つまり、「Fox01」が食欲促進物質を増やしていることになる。
北村助教授は「Fox01の働きを調節することで食欲をコントロールできる可能性がある。動物で効果が出れば、人の治療への応用を考えていきたい」と話している。
水道管の内側など水が多い場所にくっついて生息する細菌の一種が、市販の「強力」接着剤の2倍以上の接着力を発揮できることを、米インディアナ大などのチームが13日までに実験で確かめた。自然界最強の記録だという。
水に強く、人体への毒性も確認されていないため、接着成分だけを大量生産できれば、外科手術などの用途に理想的。しかし「機械にくっつかせず製造できるかどうかが問題になりそうだ」という。
「カウロバクター・クレセンタス」という細菌で、尾のように伸びた付着器官の先端を使い、水道管内部や川の中の岩など、水が豊富な場所の平面にくっつく。器官先端にある糖の分子に秘密がありそうだが、接着の仕組みは完全には解明されていない。
知能指数(IQ)が非常に高い子供は、高度な精神活動をつかさどる大脳前部など特定の皮質の発達パターンに独特の特徴があると、米国立衛生研究所などのチームが30日付の英科学誌ネイチャーに発表した。
7歳ごろには平均より薄い皮質が急激に厚くなって11、2歳でピークを迎え、その後急激に薄くなる。チームは「賢さには皮質の厚さ自体より、成長期の変化の仕方の方が重要らしい」と分析している。
5歳以上の青少年307人について、磁気共鳴画像装置(MRI)による脳の撮影を、最長19歳まで行った。知能テストを基に(1)IQが特に高い(121−149)(2)高い(109−120)(3)普通(83−108)の3群に分け、年齢に伴う大脳皮質の変化を分析した。
魚の脂肪に多く含まれ、日本でもサプリメント(健康補助食品)として販売されているオメガ3脂肪酸が、心臓病やがんなどの予防に効果的だとする明確な根拠はないとの研究結果を英イーストアングリア大などの研究班がまとめ、24日の英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(電子版)に発表した。
魚の脂肪は一般的に心臓病予防に効果があるとされ、英政府も国民に摂取を勧めている。しかし、研究班は害の有無についても調べる必要があるとしており「狭心症などの人は、念のため、多量の摂取は控えた方がいい」としている。
気管から入ったナノメートル単位(ナノは10億分の1)の超微粒子が、肝臓や腎臓などに移行することを、国立環境研究所がマウスの実験で確認した。19日に開かれたナノテクノロジーの環境影響に関する作業部会で発表した。ナノテクノロジーで製造されるナノ材料は分解しにくい特性があり、研究グループは「体内にとどまる時間が長いと、影響が懸念される」と指摘する。
研究グループは、ナノ粒子が気管から入ると、肺胞と呼ばれる肺の組織から別の臓器や器官に移行するという結果が海外で報告されているため、測定しやすい金粒子を使って調べた。
粒径20ナノメートルと200ナノメートルの2種類を、高濃度でマウスの気管に注入し、2時間後と24時間後の体内での分布を顕微鏡で調べた。肝臓、腎臓、脾臓の血管部分にあることが分かり、20ナノメートル粒子は心臓でも見つかった。また、肺胞にある異物を取り込んで分解するマクロファージと呼ばれる細胞に、ナノ粒子が取り込まれているのが観察された。20ナノメートル粒子は肺胞壁を通過して血管内に直接移行していることも分かった。
古山昭子主任研究員は「マクロファージがナノ粒子を運んでいるほか、直接血管を通って移行していると考えられる。今後、カーボンナノチューブなどのナノ材料でも実験する必要がある」と話している。
慶応大学など日米欧の研究チームは、人間の8番染色体の遺伝情報(DNA配列)を分析し、性染色体を除く22対の染色体の中で最もチンパンジーとの違いが大きいことを突き止め、19日発表した。
8番染色体には、脳の大きさに関係していると見られる遺伝子が多数あることも確認、人間の進化を探る重要な手がかりになりそうだ。
8番染色体は、人間の全遺伝情報の5%を担い、現時点では、739個の遺伝子が見つかっている。
慶応大によると、8番染色体はチンパンジーと比べて変異が多く、変異の割合が全染色体平均の約2倍に達する領域もあった。
変異が大きい領域には、外敵などが侵入した際に最初に働く自然免疫や、脳が小さくなる「小脳症」の原因となる遺伝子など神経系の遺伝子が多数存在していることもわかった。
研究チームの清水信義・慶応大学医学部教授(分子生物学)は「8番染色体を調べることで、脳や免疫機構の発達などヒトの進化のなぞに迫ることができるかもしれない」と話している。
冷たいジュースやアイスクリームは、よほど甘くしておかないと「甘味」を感じにくい。
このような温度による味覚の違いは、舌や口内の細胞「味細胞」にある特定の蛋白質によって起きることを、九州大大学院歯学研究院の二ノ宮裕三教授(生理学)らの研究チームが動物実験で突き止めた。
だれもが実感していることだが、科学的には未解明だった。成果は英科学誌ネイチャー最新号で発表された。
甘味を感じさせる物質が味細胞の表面にあるセンサーにくっつくと、その情報が伝わって電気的興奮が発生。これが神経を通じて味覚として脳に伝わる。
二ノ宮教授らは、刺激の中継役となる蛋白質の一つ、TRPM5に着目。これが体内で作れないマウスと、通常のマウスの計約20匹に、砂糖や果糖などの甘い物質7種類を、15、25、35度の3段階の温度でそれぞれ与え、神経の電気的な興奮度を測定した。
通常のマウスでは、甘い物質の温度が高いほど、神経が興奮する傾向を示したが、TRPM5が作れないマウスでは、温度による変化があまりなく、TRPM 5の働きで甘味の感じ方が左右されることがわかった。
膵臓癌や肺癌などを引き起こす遺伝子「N−ras」に、がんを悪性化させたり、転移を抑える働きもあることを、京都大の高橋智聡・特任 助教授(分子腫瘍学)と米ハーバード大のマーク・ユーイン博士が発見した。新しいがん治療開発の手がかりとなる可能性がある。19日、米科学誌「ネイチャー・ジェネティクス」で発表される。
N−ras遺伝子は、突然変異が起きたり、「Rb」と呼ばれるがんを抑制する遺伝子がなくなると、さまざまながんを引き起こすことが知られていた。高橋 助教授らは、マウスの体に二つずつあるN−rasとRbの遺伝子を一つ、あるいは二つ欠損させ、体のどの部位にどんながんができるかを調べた。
Rbだけを二つとも欠損したマウスは脳下垂体に悪性のがんができたが、Rbに加えてN−rasもすべて欠損すると、がんは良性腫瘍になった。しかし、同 じマウスで、のどの甲状腺にできたがんの場合は、Rbが二つ、N−rasが一つ欠損すると良性腫瘍ができ、さらにN−rasもすべてなくなると、他の臓器に転移を起こす悪性のがんに変化した。
高橋助教授は「N−rasは従来言われていた単純ながんを促進する遺伝子ではなく、組織によって正反対の働きもすることが分かった。N−rasの機能を 制御すればより効果的ながん治療法を生み出せるだろう」と話している。
神経回路が損傷し、体に触れるだけで強い痛みを感じる慢性疾患「神経因性疼 痛(とうつう)」が、脊髄(せきずい)の細胞から大量放出される特定物質が神 経細胞を刺激するために引き起こされることを、九州大の井上和秀教授らとカナ ダの大学の共同チームがラットを使った実験で突き止めた。15日付の英科学誌 ネイチャーに発表した。
神経因性疼痛は、がんや糖尿病の患者、手術後などに起きるが、発症の詳しい 仕組みは分かっていない。鎮痛剤のモルヒネも効かず、効果的な治療法がないのが現状だ。
井上教授らはこれまでに、神経因性疼痛では、中枢神経で免疫機能を担う細胞 「ミクログリア」が活性化し、その細胞表面で情報伝達にかかわるタンパク質 「P2X4」が異常に増えていることを発見。今回は、P2X4が痛みにどう関与 しているかを調べていた。
手術の後遺症やがんの悪化で、神経が傷つけられたり圧迫されたりして起きる「神経因性疼痛」と呼ばれる痛みは、本来は神経細胞の活動を抑え る物質が、逆に神経を異常に興奮させたために起きていたことを、九州大やカナダ・トロント大などの国際チームが突き止めた。
慢性的な痛みの治療法の解明につながる成果で英科学誌ネイチャー最新号に発表した。
痛みは、皮膚の末梢神経から脊髄を経て、大脳皮質などの神経細胞に伝わり感じる。神経因性疼痛には、脳や脊髄にある「microglia`ミクログリア`」という特殊な細胞が関係していることはわかっているが、痛みが起きる仕組みは謎だった。
九州大の井上和秀・教授(神経薬理学)らは、痛みと同様の刺激を与えたミクログリアをラットの脊髄に注入して反応を調べた。
その結果、通常なら神経細胞の興奮を抑えるGABAという神経伝達物質が、本来と逆の働きをして、神経を興奮しやすい状態にすることがわかった。
ミクログリアから出る脳由来神経栄養因子が関与しているとみられ、この因子を妨げる物質を入れると、GABAが神経を興奮させる働きは抑えられた。
スウェーデンのカロリンスカ研究所は3日、05年のノーベル医学生理学賞を豪州の西オーストラリア大のバリー・マーシャル教授(54)とロビン・ウォーレン名誉教授(68)に授与すると発表した。両氏は82年、細菌の一種のヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)を発見し、ピロリ菌の感染が胃潰瘍(かいよう)や十二指腸潰瘍の原因になることを突き止めた。
授賞式は12月10日、ストックホルムで開かれる。賞金の1000万クローナ(約1億5000万円)は両氏に半分ずつ贈られる。
消化器の潰瘍は、ストレスや生活習慣が原因だと考えられていた。病理医だったウォーレン氏は70年代末、胃の一部の組織を切り取る検査を受けた患者の半数で、胃の下部にらせん状の細菌が集まり、その周辺で胃粘膜が炎症を起こしていることを発見した。
マーシャル氏は82年、この細菌の分離と培養に成功し、ヘリコバクター・ピロリと名づけた。胃や十二指腸に潰瘍を持つ患者のほとんどが持っていることから、ピロリ菌が潰瘍の原因だと提唱した。ピロリ菌の除去で潰瘍が治ることも示した。
胃潰瘍と同様に慢性的な炎症が起きる、潰瘍性大腸炎やクローン病などの研究にも新しい視点を提供することになった。
強い酸性の胃液が出る胃の中に細菌がすめるはずはないとされ、ピロリ菌の存在を否定する専門家も多かった。このため、マーシャル氏は自らピロリ菌を飲み、急性胃炎になることと抗生物質で菌を殺すと胃炎が治ることを示し、自説を証明した。
野菜や果物をたくさん食べても大腸がんの予防にはつながらないことが、厚生労働省研究班の坪野吉孝・東北大教授(疫学)らによる男女約9万人の追跡調査で明らかになった。
日本では近年大腸がんが急増。大腸がん予防には野菜の摂取が重要と言われていたが、この“常識”を覆す内容だ。成果は9日付の英国のがん専門誌に掲載された。
調査は1990年以来、全国の40〜69歳の男女約9万人を対象に食事や喫煙などの生活習慣に関するアンケートを実施し、約10年間追跡した。この間、705人が大腸がんになった。
研究では9万人を野菜や果物の摂取量別にそれぞれ4グループにわけ、大腸がんの発生率と比較した。その結果、野菜でも果物でも、最もよく食べるグループと最も少ないグループとの間で、大腸がんの発生率に差はなかった。大腸がんを結腸がんと直腸がんに分けて調べても差はなかった。
同研究班はこれまで、胃癌については、野菜・果物の予防効果を確認しており、野菜や果物の摂取が奨励すべき生活習慣であることに変わりはないという。
肥満の予防に役立つ蛋白質を、慶応大と山之内製薬の研究グループがマウス実験で突き止めた。この蛋白質は人間にもあり、やせ薬の開発につながると期待される。
この成果は21日付の米科学誌ネイチャー・メディシン(電子版)に発表される。
慶応大医学部の尾池雄一講師らと山之内製薬分子医学研究所は2003年に、肝臓から分泌され、血管や皮膚の再生機能を持つ新しい蛋白質を発見、AGFと名づけた。
その仕組み解明のため、遺伝子操作でAGFを失わせたマウスを作ったところ、普通のマウス(平均30グラム)の2倍近い、約50グラムの肥満マウスになった。基礎代謝が低下し、内臓脂肪や皮下脂肪が多く、糖尿病の症状も現れた。逆に、AGFの量を約2倍に増やしたマウスを遺伝子操作で作り、高カロリーのエサを3か月間食べさせたが、約8グラムしか太らず、糖尿病にもならなかった。同じエサを食べた普通のマウスは、約24グラムも体重が増え、糖尿病を発症した。普通のマウスを1年間太らせた後で、AGFの分泌量を増やしたところ、肥満や糖尿病が改善されることが確認できた。
歯の表面に塗るとエナメル質と一体化し同じ結晶を作る人工エナメルを開発したと、FAP歯科研究所(山岸一枝代表、東京都目黒区)や山梨大工学部の鈴木喬教授らのグループが、24日付の英科学誌ネイチャーに発表した。
初期虫歯で歯の表面が溶けた部分に人工エナメルを塗れば、歯を削ることなく治療できる。虫歯がなくてもエナメル質を強化し、虫歯予防に役立つという。
山岸代表らは、歯の主成分ハイドロキシアパタイト(HA)を構成する水酸基の一部を、フッ素イオンに置き換え、酸性溶液で溶かしてペースト状にした。これを歯の表面に塗ったところ、酸の影響で表面がごくわずかにいったん溶け、そこにペーストのHAが元のエナメル質と同じ配列で新たな結晶を作り一体化したという。
BSE(牛海綿状脳症)を引き起こす異常プリオンは、特定危険部位と呼ばれる脳や脊髄(せきずい)などの組織だけでなく、炎症が起きた時に活動する免疫細胞を通じて肝臓や腎臓、すい臓などにも多く蓄積されることが米エール大などの共同研究でわかった。
炎症を起こしたマウスでの結果だが、家畜の肝臓は食用になるだけに、研究チームは「家畜の感染症や自己免疫疾患などの病歴に注目して検査を行う必要がある」と指摘している。21日付の米科学誌サイエンスに掲載される。
研究チームは自己免疫疾患など5種類の慢性病で腎炎や肝炎、すい炎を引き起こすように遺伝子を改変したマウスの脳や腹部にプリオンを注射し、正常なマウスに注射した場合と比較した。その結果、炎症の有無などで違いはあるものの、腎、肝、すい臓とも、特定危険部位の脾臓(ひぞう)と同程度の濃度のプリオンが集まることが確認された。
牛の場合、特定危険部位以外では、筋肉中の末梢(まっしょう)神経や副腎から微量のプリオンが発見された例がある。
白血病などの血液がんの細胞に特有の遺伝子の修飾異常を目印に、微量の血液でがんの有無を検査する方法を、岡剛史岡山大助手(病理病態学)と大内田守同大助教授(分子遺伝学)らが23日までに開発、血液がん患者を対象に診断に使う臨床試験を始めた。
実用化できれば早期発見や治療効果の判定などに役立つと期待される。
岡助手らは血液がんの一種、悪性リンパ腫の発症のメカニズムを調べる中で、特定の遺伝子の発現が抑えられていることを発見。この遺伝子はDNAの配列の一部にメチル基という分子がくっついて化学修飾され、正常に働かなくなっていた。
この遺伝子修飾を検査に利用しようと、数万個の正常細胞の中にがん細胞が1個あれば分かる感度を備えた検査システムを開発した。
身を利用した後に捨てられていたサケの皮から、化粧品の保湿剤などに使われる利用価値の高いコラーゲンを作り出すことに、北海道大大学院の棟方正信教授らのグループが成功した。
BSE(牛海綿状脳症=狂牛病)や家畜伝染病などが心配されるウシやブタに代わる安定した原料供給源になるうえ、年間約2100トンが捨てられているサケの皮の有効活用にもつながる。15日から同大で開かれる高分子学会で発表される。
コラーゲンは蛋白質の1種で、細胞同士を接着する役割などを果たしている。冷たい水の中にすむ魚類のコラーゲンはセ氏20度ほどで分解、変化してしまうため室温での保存が難しく、化粧品や、生物実験の細胞培養で人肌に温めて使う培地としての利用ができなかった。
棟方教授らは、抽出したコラーゲンに特殊な化学加工を加え、47度でも安定したゼリー状のコラーゲンの塊を作ることに成功した。ブタで作った従来品の5倍の強度があり、実用上の優れた性質が期待できるという。
日本人男性は、やせているほどがんになりやすく、標準かやや太めに比べ、がん発生率は14−29%高いことが、厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)の大規模疫学調査で分かった。米国のがん専門誌に11日までに発表した。
研究班は、40−60代の男女約9万人を1990年から約10年にわたって追跡し、がんの発生率や死亡率と体格指数(BMI)との関係を調べた。
BMIは、体重(キロ)を身長(メートル)の二乗で割った値。標準は22で、25以上が肥満とされる。BMIが21−20・9の男性ではがんの発生率はほとんど変わらなかったが、やせとされる21未満で増加傾向が顕著だった。23−24・9の人の発生率と比較すると、19−20・9の人は14%、14−18・9の人は29%、それぞれ発生率が高かった。女性では、こうした傾向はみられなかった。
植物はウイルスなど病原体に侵された時、自分の葉などを枯らす「細胞の自殺」によって感染を食い止める自己防御能力があることが知られているが、京都大大学院理学研究科の西村いくこ教授(植物分子細胞生物学)らの研究グループが、細胞死を起こす酵素を世界で初めて特定した。6日発行の米科学誌サイエンスで発表する。
タバコの葉にモザイク状の病変を起こす典型的な病原体「タバコモザイクウイルス」を含む溶剤を葉に塗り、人為的に感染させて実験した。
西村教授らは細胞の中にある器官「液胞」で作られ、蛋白質の分解を促す働きが知られていた酵素「VPE」(91年に同教授らが発見)に注目。遺伝子操作でVPEの働きを通常の1%以下に抑えたタバコの株を作り、通常の株と比べた。その結果、通常株はウイルスを塗った部分の葉が枯れたのに対し、VPE抑制株では枯れないため葉にウイルスが広がってしまい、VPEが細胞死を起こしていることが確かめられた。
西村教授は「世界の研究者が探していた酵素の実体を明らかにできた。病害による農作物の損失は年間15%とも言う。感染時に素早く自ら葉を枯らす株を遺伝子操作で作るなど、農薬に頼らない病害対策につながれば」と話している。
事故などで脊髄(せきずい)を損傷した日本人患者9人が、治療のため中国の病院で中絶胎児から採取した細胞の移植を実際に受け、6人が治療を予約していることが、現地の関係者や患者団体「日本せきずい基金」の調査で21日わかった。
国内では治療の手立てがなく、患者は一縷(いちる)の望みをかけて渡航しているが、有効性や安全性が確立したとの評価はなく、日本人の相次ぐ渡航に懸念の声も出ている。
治療を行っているのは、北京の首都医科大学病院の医師。中絶胎児の鼻の粘膜細胞を採取し、培養後に患者の損傷部付近に注射で移植する。細胞移植によって、切断された脊髄の神経細胞の再生が促されるらしく、これまで動かなかった腕や足に感覚が戻り、自力で動かすことができるようになる、という。
関係者によれば、2001年秋から三百数十人の中国人に移植を実施。風評を聞きつけた米国人や日本人ら計数十人も治療したとされる。今年2月に日本人として初めて細胞移植を受けた愛知県の男性は、約1か月の滞在で2万ドル(約216万円)かかったが、明らかな効果は出ていない。
治療成果について、医師は論文の形ではほとんど報告していない。同基金の照会に対し治療チームは、これまで患者3人が死亡、移植後の数週間―数か月、ほとんどの患者が異常な痛みを感じると回答したが、原因はわかっていない。
神経再生に詳しい日本人研究者は「有効性も安全性も確立されたとはいえない」と指摘する。同基金の大浜真・理事長は「治療の手立てのない脊髄損傷の実情は知ってほしいが、患者団体としては現段階では推奨できない」としている。
薬剤が効きにくい歯周病菌に対し、優れた殺菌効果を示す物質をライオンのオーラルケア研究所が発見した。
虫歯と並び、歯を失う原因の半分を占めるとされる歯周病の予防に生かせると期待される。
歯の表面についたネバネバの「歯垢=しこう」は、食べ物のかすをエサに繁殖した細菌の集団。集団化した細菌は、糖などで防護壁を作り、薬をはね返してしまう。
ライオンは、この防護壁を突破できる物質の探索に乗り出し、ボディーソープなどに使われている化学物質「イソプロピルメチルフェノール」が、突破力も殺菌効果も極めて高いことを発見した。
歯垢の除去は歯磨きが最も効果的だが、完全に磨くのは極めて難しく、40歳代の歯周病の保有率は8割に上るとされる。放置すると歯茎が炎症を起こし、悪化すると周囲の骨まで侵食、歯が抜けてしまう。
同社は今後、この物質を入れた歯磨き剤の開発を進める。
てんかん(癲癇)は細胞死が予定通りに進まないことが原因で発症――。こうした新説を、理化学研究所脳科学総合研究センターの山川和弘チームリーダーらと米カリフォルニア大ロサンゼルス校の共同研究チームが19日、米科学誌ネイチャージェネティクス電子版に発表する。
てんかんは筋肉の収縮と意識障害が発作的に起き、突然転倒するなどして体がけいれんする病気。発作が何度も繰り返して起きるのが特徴で、全人口の1%以上が発症するといわれている。
山川氏らは、てんかん患者のうち7〜9%を占める遺伝性の「若年性ミオクロニーてんかん」について、44家系の遺伝子の特徴を調査。その結果、メキシコ人ら6家系に共通した遺伝子の異常を発見した。
この遺伝子の異常は、不必要になった細胞を自動的に除去する仕組み「アポトーシス」を妨げる働きがある。てんかんは、神経細胞が異常に活発化して発症するとみられていたが、今回の発見により、脳内に不必要な神経細胞が残ることが原因で発症する可能性があることがわかった。
山川氏は「まだ仮説にすぎない。さらに研究を重ねて、てんかん発症の仕組みの解明や治療法の開発に結びつけたい」と話している。
心筋梗塞の発症にガレクチン2というタンパク質を作る遺伝子が関与し、その塩基配列が1つだけ違う人は1.57倍発症しにくくなることを、理化学研究所遺伝子多型研究センターの田中敏博チームリーダーらが突き止めた。6日付の英科学誌ネイチャーに発表した。
塩基配列が1つ違う遺伝子を持つ人は、心筋梗塞患者で約9%、健康な人で約14%。発症原因となる血管の炎症の進行が抑えられるためと、研究チームはみている。
心筋梗塞は、世界でも日本でも死亡原因の上位に入り、高脂血症など生活習慣病と遺伝的要因が重なって発症するとみられる。今回の発見は遺伝子レベルのメカニズム解明に道を開く成果で、田中さんは「遺伝子を調べれば発症の危険性について注意喚起でき、予防に役立つ」と話している。
カナダ通信は3日、カナダ東部のニューブランズウィック州で同日までに、短時間で皮膚や筋肉を壊死(えし)させる「人食いバクテリア」に感染した患者1人が死亡、1人が隔離されたと伝えた。このほか5人が経過観察中だという。
感染経路などは不明だが、感染した2人は同じ病院で治療を受けていた。4月30日に死亡した患者の身元などは明らかにされておらず、治療開始から24時間以内に死亡したという。
独立行政法人国立病院機構(東京都目黒区)は、癌や循環器病など20分野で、治療成績を評価する「臨床評価指標」を定めた。今年度から分野ごとに全国160の国立病院の比較を始め、格差が判明すれば縮小を図る。成績がほとんど比較されてこなかった精神病やアレルギー疾患にも対象を広げている。幅広い医療分野で評価の公的な指標が作られるのは初めて。治療成績の公開については「比較できる指標をどう作るかが難しい」と難色を示す医療関係者も多いが、同機構が率先して指標を作ったことで、公開を求める患者側の声が高まりそうだ。
国立病院の運営については従来、財政面からのチェックが中心で、治療成績の評価はしていない。今年4月の国立病院の独立行政法人化にあたり、評価方法が課題として指摘されていた。
評価対象は、癌や循環器病、結核などの呼吸器疾患、精神疾患など国が「政策医療」として診療体制整備や研究推進を図ることを定めている19分野と、高度先進医療などの「高度総合医療」の計20分野。02年から、各分野の国立病院の専門医らが指標を検討し、昨年度に評価の試行をした。
その結果、癌は胃癌や大腸癌の切除手術後の5年生存率、乳癌の乳房温存手術率がどれだけ高いかなどを見る24項目を選んだ。循環器病では急性心筋こうそく患者の死亡率、脳こうそく・脳内出血の重症度別死亡率など10項目。また、精神疾患は平均在院日数や転倒・転落件数など16項目、免疫異常(アレルギー・リウマチ疾患)は気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎の重症度改善率など11項目を指標に決めた。
今後は毎年、分野ごとにデータを集計し、各病院の治療成績を比較する。病院側は指標を活用し、病院の5年計画に「急性心筋こうそく患者の死亡率を○ポイント減少させる」など具体的な目標を明記する。
この指標で集めた成績を公開するかは決まっていないが、同機構は「今後の検討課題だ。まずは指標を実際に使い、より厳密に比較ができる指標へと改善していくことを目指したい」と説明している。
● 病院選びの参考に
10項目程度で病院の実力が評価できる指標を――。独立行政法人国立病院機構が決めた「臨床評価指標」は、そんな狙いで作られた。病院の成績比較を促すだけでなく、患者の病院選びにも参考になりそうだ。
患者の関心が高い癌では、癌の種類によってそれぞれ特定のステージ(病期)の患者の生存率を指標に選んだ。中心となった笹子三津留・国立癌センター中央病院外科部長は「病院の実力が反映されやすいステージにした」と説明する。例えば胃癌治療では、切除(手術)を受けた患者のうち、比較的進んだ病期である「ステージ3」の人の生存率が高ければ、他のステージの患者の治療成績もおおむね良好とみられるという。
小児医療や周産期医療の成育医療分野について国立成育医療センターの名取道也・周産期診療部長は「どの程度の数字ならいい成績と言えるか、これから定まっていく指標もある」と話す。例えば小児の「急性虫垂炎の誤診率」。虫垂炎との診断で手術した患者のうち実はそうではなかった患者の割合で、基本的には低い方がいい。しかし、あまりに低いと、手術すべきケースを見逃している可能性もあるという。
● 主な分野の主な指標は次の通り。
【癌】▽胃癌治療関連死亡(手術や副作用による死亡)率▽胃癌切除患者(ステージ3)の5年生存率▽乳癌の乳房温存手術率▽乳癌治療関連死亡率▽乳癌切除患者(ステージ2)の10年生存率▽大腸癌治療関連死亡率▽大腸癌切除患者(ステージ3)の5年生存率▽子宮癌手術治療関連死亡率▽子宮頚(けい)癌患者(ステージ3)の5年生存率▽肺癌治療関連死亡率▽肺癌切除患者(ステージ2)の5年生存率▽肝細胞癌治療関連死亡率▽肝細胞癌切除患者(ステージ2)の5年生存率
【循環器病】▽破裂脳動脈瘤の重症度別死亡率▽脳梗塞及び脳内出血(発症7日以内)の年齢別、重症度別死亡率▽退院時主病名が心不全である死亡率▽急性心筋こうそくの年齢別、重症度別の死亡率等▽心臓血管外科手術死亡率
【成育医療】▽急性虫垂炎(15歳未満)の誤診率▽NICU(新生児集中治療室)入院患者のMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染による発病率▽低出生体重児(2500グラム未満)の死亡率▽摂食障害で入院治療開始6カ月後の体重が、開始時より5%以上増加した率▽不登校で外来・入院治療開始後、1年以内に週1回以上登校可能になった率
急性骨髄性白血病などのため兄弟から骨髄や末梢(まっしょう)血幹細胞の移植を受けた3人の女性患者が死亡した後、脳組織を調べたところ、移植された幹細胞が脳神経細胞やその周囲で補佐するグリア細胞に変わっていたと、米フロリダ大学の研究チームが2日までに英医学誌ランセットに発表した。
骨髄や末梢血に含まれる幹細胞が脳神経細胞に分化するかどうかをめぐっては、幹細胞が脳神経細胞と融合するだけで、分化はしないとの実験報告もある。
しかし、研究チームは男性の性染色体が「XY」の組み合わせであり、女性の「XX」と明確に区別できることに着目。3人の女性の脳神経細胞などの性染色体を調べた結果、一部に「XY」があり、男女の細胞が融合したことを示す「XXXY」は見つからなかったことから、細胞融合ではなく、移植された幹細胞が分化したと結論付けた。
移植された幹細胞が脳神経細胞に分化するには数年かかる可能性がある。分化を促す要因を特定して人為的に操作できれば、パーキンソン病の治療など、脳神経の再生医療に応用できるという。
乳癌治療薬として多用されている「タモキシフェン」が、細胞内のDNA(デオキシリボ核酸)を損傷することを、京都大大学院医学研究科の武田俊一教授(分子生物学)らのチームが確認した。
1日付の米国「癌学会雑誌」で発表する。タモキシフェンは子宮癌の発生率を高める副作用が知られており、その仕組みの解明が進めば、より安全な治療薬の開発につながると期待される。
武田教授らは、遺伝子を操作したニワトリの細胞を使い、DNAへの損傷を高感度で検出できる新技術を開発。タモキシフェンによって、従来は検出不能だった微細な損傷が発生し、細胞が癌化しやすい状態になることを突き止めた。
タモキシフェンは、乳癌や卵巣癌の悪化につながる女性ホルモンの働きを抑制する。子宮癌の発生率が7・5―4倍に高まるが、その仕組みは不明だった。
再生しない臓器とされる心臓にも、ほかの細胞の元になる幹細胞があり、拍動する心筋細胞を生み出すことを小室一成千葉大教授(循環病態医科学)らのグループが30日までに、マウスを使った実験で突き止めた。
心臓に幹細胞があるらしいとの研究はこれまでも発表されているが、実際に拍動する心筋細胞に分化させたのは世界初。心筋梗塞などで傷んだ心臓を修復する、再生医療への応用が期待されている。
同教授らは、心臓の細胞の中に幹細胞に特徴的なSca1というタンパク質を持つものがあることに着目。成長したマウスの心臓を酵素でばらばらにし、この細胞だけを取り出して培養。オキシトシンというホルモンをかけたところ、4週間後には培養皿の上で自律的に拍動する細胞が現れ始めた。
オスの精子を使わずに、メスの卵子だけからマウスを誕生させる「単為(たんい)発生」に、東京農業大の河野友宏教授らが世界で初めて成功した。哺乳(ほにゅう)類ではこれまで不可能と考えられていた。
今回の手法は、遺伝子改変などを必要とし、そのまま人間に応用することはできないが、理論的には女性の卵子だけから赤ちゃんが生まれる新たな可能性が示されたことで、生命倫理面でも論議を呼びそうだ。22日付の英科学誌「ネイチャー」に発表する。
哺乳類で単為発生が不可能とされたのは、受精から個体が誕生するまでに必要な卵子と精子の遺伝子の働きに違いがあり、精子の遺伝子がないと胚(はい)がうまく育たないためだ。
卵子と精子の遺伝子は目印で区別されているが、河野教授は、卵子の元になる未成熟な卵母細胞にはこの目印がまだなく、目印のごく少ない精子の状態に近いことに着目した。
精子により近づけるため、遺伝子を改変した特別なマウスを作り、未成熟な卵母細胞を採取。目印が付かないように工夫して精子に似た状態を保つ卵子を作った。その後、この卵子の核を、別のマウスの卵子に精子の代役として移植し、化学物質で刺激を加え、受精卵のように分裂させた。
母胎に戻した371個の胚から、正常に生まれたマウスは2匹だけで、18匹が死産、8匹は体が小さく産後すぐに死んだ。
「かぐや」と名付けられた1匹は、1歳3か月の今も元気で、12匹のマウスを出産している。
河野教授は「クローン技術とは異なる新しい動物生産システムで、優良な家畜の育種に役立つ。人間に今回の手法をそのまま使うことは不可能で生殖医療への応用は想定していない」と話している。
● 単為発生 卵が精子なしに、化学的な刺激などで分裂を始め、個体を発生する生殖法。昆虫や魚類、両生類、鳥類では、特別な操作をせずに自然状態でも観察される。アリやミツバチは、単為発生でオスを、受精でメスを産み分ける。
子宮頚癌や食道癌の放射線治療を受けた患者の生存率に、病院が適切な治療装置を使ったかどうかで最大3倍の差が出ることが、厚生労働省研究班(班長・手島昭樹大阪大教授)の調査で分かった。以前から不適切だとされている装置で治療を続けている病院が多いことも明らかになった。
研究班は、全国で放射線治療をしている約700の病院から75カ所を抽出。95〜97年に治療を受けた各種の癌患者について調べた。
子宮頚癌では、放射線を出す金属を子宮内に挿入して癌をたたく「腔内(くうない)照射」の装置を使ったかどうかで、生存率に大差があった。進行癌の「3期」の場合、同装置を使わない患者の5年生存率は23%だったが、同装置で治療を受けた患者は64%。より進んだ「4期」でも13%と38%の差が出た。受けなかった患者の一部は症状が重かった可能性もあるが、それを考慮しても照射の有無が大きく影響したとみられる。
日本放射線腫瘍(しゅよう)学会の別の調査によると、全国で放射線治療をする病院のうち、腔内照射をする病院は約2割。しない病院は、照射が必要な患者を設備のある病院に紹介するのが原則だが、紹介しない病院も目立つという。
また研究班が食道癌の手術を受けずに放射線治療を受けた556人を調べたところ、放射線のエネルギーの違いが生存率に影響していた。
複数の医学専門書によると、体の奥にできる食道癌の治療には、癌細胞に放射線を届かせるため6メガボルト以上の高いエネルギーの放射線を使う必要がある。ところが、調査対象の75病院のうち20病院には高いエネルギーの装置がなかった。病院の規模などから全国では患者の2割強が低いエネルギーで治療されていると推計された。
3年生存率を調べると、癌があまり進んでいない「1期」と「2期」の場合、低いエネルギーで治療を受けた患者は35%だったが、高いエネルギーだと44%。より進んだ「3期」では5%と18%だった。
手島教授は「患者は病院に、腔内照射を受けられるか、放射線のエネルギーが6メガボルト以上かを確認した方がよい。行政や病院は、適切な装置を備える努力をしてほしい」と話している。
たばこの先端から立ち上る煙(副流煙)や喫煙者のはき出す煙を吸い込む受動喫煙で、血液中の免疫細胞の数が増えることを筑波大社会医学系の谷川武・助教授らが突き止め、14日発行の米国医師会誌に発表した。
リンパ球など免疫細胞は、ウイルスや細菌を殺したり、抗体を作ったりするが、増え過ぎると血管内の炎症を起こし、動脈硬化の危険が高まるとされている。
谷川助教授らは、電力事業所の男性従業員670人の血液中のリンパ球や白血球など免疫細胞の数を調べ、喫煙者(363人)、喫煙経験者(154人)、喫煙歴がなく家族や同僚にヘビースモーカーがいる受動喫煙者(118人)と、非受動喫煙者(35人)に分けて比較した。
その結果、リンパ球数は、非受動喫煙者と比べ、喫煙者が1・7倍、受動喫煙者が1・3倍だった。リンパ球の中で、血管内の炎症と深くかかわるとされる細胞(CD4)は、喫煙者が1・8倍、受動喫煙者が1・3倍で、白血球数は、喫煙者1・2倍、受動喫煙者1・1倍だった。
カナダ・ブリティッシュコロンビア州の高病原性鳥インフルエンザが発生した養鶏場で、鶏の検査に当たったカナダ食品検査庁の職員がウイルスに感染したことが27日分かった。
カナダ放送協会(CBC)が同日伝えた。カナダでの人への鳥インフルエンザ感染例は初めて。
同州保険当局によると、職員が感染した鳥インフルエンザのウイルスは、毒性が弱く重症には至らない「H7」型の一種とみられ、東南アジアで死者も出た「H5N1型」とは異なる。職員は死んだ鶏を扱って感染した結果、結膜炎にかかったがすぐに回復したという。
同じ養鶏場では、10人の職員が風邪の症状を訴え検査を受けている。
65歳以上の喫煙者は、たばこを一度も吸ったことがない非喫煙者に比べ、認知機能の低下が平均5倍以上も早く進行することが、オランダ・エラスムス大学医療センターなどが欧州で行った大規模調査で分かった。研究成果は23日付の米神経学会誌ニューロロジーに発表された。
世界保健機関(WHO)は10日、薬草の誤用による健康被害や、乱獲による種の絶滅を防ぐための指針を作成した。薬草に関する日本の厚生労働省の基準などを参考にしている。
WHOによると、薬草の利用は過去20年間に世界中で急増し、2000年には市場規模が600億ドルに達した。利用の増加に伴い誤用による健康被害も増加、米国ではダイエット用のオオバコと間違えて強心剤として用いられるジギタリスを服用し、激しい不整脈に襲われたケースもあった。
一方では乱獲のため、薬用ニンジンなどの野生種に絶滅の恐れが出ている。
脳の神経細胞が互いに軸索を伸ばして絡み合い、回路網を形成するには、これまで栄養を与える程度と考えられていた「グリア細胞」の1種が神経細胞に接着し、不飽和脂肪酸を流入させることが重要だと分かった。理化学研究所脳科学研究センターの宮脇敦史チームリーダーらがラットの脳細胞を使った実験で解明し、5日付の米科学誌ニューロンに発表した。
アルツハイマー病を引き起こす原因と考えられている蛋白質「ベータアミロイド」の発生を遺伝子治療で抑えることに、理化学研究所と自治医科大の研究グループが初めて成功した。遺伝子治療は薬剤に比べて、長期間効果がある。安全性が確認できれば新しい治療法になると期待される。28日発行の北米神経科学誌に掲載された。
アルツハイマー病は、ベータアミロイドが長い年月をかけ、脳に蓄積して神経細胞が死滅して起こるとされる。
研究グループは01年、ベータアミロイドを分解する酵素「ネプリライシン」を発見。ネプリライシンを作り出す遺伝子を、ベクター(遺伝子の運び屋)を使い、アルツハイマー病を起こしているマウスの脳に注入した。
その結果、脳内のベータアミロイドの量は投与前に比べてほぼ半減させることに成功した。遺伝子の働きは6カ月間維持されていた。
京都府立医大の三木恒治教授らのグループが、インターフェロンを作る遺伝子を腎癌の組織に注射すると、癌細胞が自ら死滅することを実験で確かめた。実際に患者に投与する臨床研究計画を15日、審査委員会に申請した。腎癌は治療が難しいとされており身体負担が少なく、効果が期待できる新治療法として注目される。
筋肉のすき間にある細胞は、筋肉や血管などさまざまな組織に成長する能力を持っている可能性が高いことを、東海大医学部の玉木哲朗講師(神経・筋肉生理学)らのグループが6日までに突き止めた。
胚性幹細胞や骨髄細胞などには、いろいろな組織になる機能があることが分かっているが、利用の際に倫理的な問題が生じたり、採取に危険が伴ったりすることもある。
この点、筋肉のすき間の細胞は、体に豊富に存在し手軽に取り出せるため、成長の機能が確認されれば、自分の細胞を使った移植治療の実現に役立ちそうだ。
この細胞はMP細胞と呼ばれ、筋肉のすき間の99%以上を占めるが、どんな働きをするのか、よく分かっていない。マウスのMP細胞を14日間培養して遺伝子などを調べた結果、筋肉や血管の細胞になっていく様子が確認された。神経細胞にするのにも成功しており、今後、他の細胞に変化する働きがあるかなどを調べるという。
リンゴの皮をむく動作が、脳の前頭前野を活性化させることを、独立行政法人食品総合研究所(茨城県つくば市)の檀一平太研究員らが見つけた。前頭前野は、人間の理性や想像力、判断力などの高度な働きをつかさどるとされる。危険な刃物を制御しながら、リンゴを動かして上手に皮をむくという複雑な動作が、前頭前野を働かせるらしい。論文は1月中旬発行の米の専門誌「ニューロイメージ」電子版に掲載される。
実験は、リモコンなどにも使われる近赤外線を頭皮ごしに脳に当て、血流量の変化を測る「近赤外分光分析法」を使った。成人男女14人(23〜52歳)にリンゴの皮をナイフでむいてもらい、血流の変化を調べた。
その結果、むいている間は、前頭前野の血流が目だって増えた。表面をナイフでなでる(むくまね)だけの時よりも、実際にむいている方が活発だった。
前頭前野は、額の裏側にあり、理性や記憶、計算など、高レベルな活動をつかさどる。痴呆症患者や「キレる」子どもの行動分析との関連が指摘され、研究が盛んだ。
研究グループは実験結果から、「危険な刃物を上手に動かす」「リンゴを微妙に動かしながら皮をむく」という複数の動作を同時進行させることが、前頭前野のワーキングメモリー(一時記憶)を活発化させていると分析した。
檀さんは「リンゴの皮むきで頭がよくなる、と即断はできないが、脳をより多く使うには、初めから皮をむいた野菜や果物を買うより自分でむいた方がいいし、おかずを買うより作った方が効果的だ」と話す。
毎年世界で100万人以上が死亡するマラリアの病原となる原虫が、感染した生物の免疫機能を抑える細胞を過剰に働かせ、異物を排除する仕組みから逃れていることを、安友康二徳島大教授(免疫学)らがマウスの実験で確かめ、21日付米医学誌ネイチャー・メディシン(電子版)に発表した。
安友教授は「この働きを抑え、新しい治療法やワクチン療法の補助につなげたい」としている。
ヒトやマウスの免疫機構では、「T細胞」という免疫細胞が異物を攻撃、排除するが、マラリア患者ではこの働きが弱いことが知られていた。
関節が炎症を起こす関節リウマチは、「シノビオリン」と呼ばれる酵素が過剰に働いて悪化するという、これまで知られていない発症メカニズムを、聖マリアンナ医科大難病治療研究センターの中島利博助教授らのチームが初めて突き止めた。従来の薬物治療では効果に限界があったが、リウマチの新たな治療法につながる成果として注目される。
関節リウマチは、関節を包む「滑膜」という薄い膜にサイトカインと呼ばれる生理活性物質が働いて炎症が起きると考えられ、サイトカインを抑える薬で治療が行われている。だが、患者の約3割は効果がない。
中島助教授らは、関節リウマチ患者の滑膜を詳細に分析して、シノビオリンが活発に働いていることを発見。遺伝子組み換え技術でシノビオリンを過剰に作るマウスを生み出し、23匹で実験した。すると、23匹すべてで関節リウマチが起き、シノビオリンが発症に深く関与する物質であると突き止められた。
シノビオリンを過剰に作るマウスは、滑膜細胞が異常に増殖していた。滑膜は、関節の“潤滑油”であるコラーゲンを作る組織だが、リウマチ患者はシノビオリンが過剰に働いて、“潤滑油”が必要以上に作られ、関節組織が傷んで炎症の原因になるらしい。中島助教授は「シノビオリンを抑えれば、すべての患者に治療効果が見込めそうだ」と話し、新薬や遺伝子治療技術の開発に着手、数年後に実用化に結びつけたいとしている。
米疾病対策センター(CDC)は21日、ペンシルベニア州ピッツバーグ近郊で先月から今月にかけて発生したA型肝炎の集団感染について、ほとんどの患者が食べたメキシコ料理チェーン店のネギ類が感染源であることを明らかにした。
集団感染の患者は同日現在で575人に達し、このうち3人が死亡している。同センターによると、問題のネギは米国で「スカリオン」「グリーンオニオン」の名で流通している細ネギ。同センターが調査した患者の98%は、加熱していないネギが含まれるサルサなどの料理を食べていた。
肝炎ウイルスの遺伝子分析では、9月にジョージア州やテネシー州などで起きたネギによる集団感染のウイルスと遺伝子型が酷似しており、メキシコからの帰国者や同国との国境付近の住民から検出されるウイルスとも共通している。同センターは、どの段階でネギがウイルスに汚染されたか、特定を急いでいる。
今回の集団感染では、食品医薬品局も消費者への警告を出し、加熱していないネギ類に対する注意を呼びかけるなど波紋を広げており、被害の出ていないワシントンなどの日本食レストランでも刻みネギを食材から外す動きが出ている。
心臓の筋肉に注射針を刺して作った細長い穴を、血管に変えてしまうことに横浜市立大の野一色泰晴講師が犬を使った実験で成功、都内で開催中の日本胸部外科学会で21日、発表した。
生体が持つ自然の治癒力を利用したのが特徴。心臓の筋肉に酸素や栄養を運ぶ血管が詰まって起こる心筋梗塞や狭心症の新たな治療法になると期待される。
同講師は、犬9匹の心臓に直径0・5−2ミリ、長さ6センチの針を刺してできた計27本の穴に、ゼリー状の材料を注入した。材料は1−2週間で生体に吸収される性質があり、血液が固まらない物質を含ませた。
2週間後と1カ月後、心臓をエックス線や顕微鏡で調べた結果、27本の穴のうち22本が血管を形成し、もとからあった血管とつながっていた。針を刺した刺激により、体内にあって血管再生作用がある血管内皮細胞と血管成長タンパク質が穴の周囲に誘導され、自然に血管が形成されたとみられる。
胸部への衝撃が心停止を引き起こす「心臓震盪(しんとう)」と呼ばれる突然死について、15日に千葉市で始まる「第14回日本臨床スポーツ医学会」で、埼玉県戸田市の戸田中央総合病院救急部の輿水健治医師が症例発表を行う。日本では認知度が低い心臓震盪の具体例を示することで、「予防策を講じる必要性を訴えたい」という。
心臓震盪については、大河原町の会社員が「小5の息子が死亡したのは、ボールが胸に当たり心臓震盪を引き起こしたためだ」として、ボールを投げた男児の両親らに損害賠償を求める訴訟を仙台地裁に起こしている。
輿水医師は学会初日のシンポジウム「スポーツと突然死 〜現場における対応〜」の中で発表する。具体例として、大河原町の男児と、東京都の中学生が少年野球のノックの球を胸に受けて死亡したケースを紹介する。共に急性循環器不全などが死因と診断されたが、心臓に既往疾患はなく、心臓震盪の可能性が高いという。
輿水医師は「スポーツ中の突然死の原因は、心室細動による致死的不整脈が多い」と指摘。救命のためには心臓に電気ショックを与える除細動の早期実施が必要で、「スポーツ指導者や救急隊員らへの教育とともに、スポーツ施設には専用機器を設置すべきだ」と訴えている。
原因不明とされる難病「拡張型心筋症」の発症原因とみられるメカニズムを、京都大医学研究科の本庶佑教授や岡崎拓助手らの研究グループがマウスを使った実験で突き止めた。「心臓型トロポニンI」というタンパク質に対する抗体が心筋の収縮力を弱らせ、心臓の拡張を引き起こすという。新たな治療法開発の糸口として期待される。米科学誌ネイチャー・メディシン電子版で3日、発表する。
本庶教授らは2001年、自己免疫疾患を防ぐ「PD−1受容体」が欠損したマウスが拡張型心筋症を起こすことを実験で確認した。ブレーキが働かないため、抗体が心臓の筋肉を外敵と勘違いして攻撃し、心筋症が進行するとみられるが、この抗体が何を認識して攻撃するのか分かっていなかった。
今回、拡張型心筋症になったマウスの心臓に沈着している抗体を調べたところ、心臓の筋肉収縮を調節している心臓型トロポリンIを認識して攻撃していることがわかった。実際、この抗体をマウスに注射すると、12週間で心臓が平均3倍(収縮期)になった。抗体が心筋の細胞に付くと、心筋収縮力が弱くなることも分かった。
岡崎助手は「今回はあくまでもマウスでの結果だが、人間でも同様の結果が確認されれば、ステロイドなどである程度治療が可能になるのでは。また、診断も容易になる」と話している。
24種類の染色体で構成される人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)のうち、6番染色体を英ウエルカム・トラスト・サンガー研究所が完全に解読し、成果を23日付の英科学誌ネイチャーに発表した。日米英など6カ国の共同プロジェクト「国際ヒトゲノム計画」の参加機関が染色体別に解読成果を発表するのは、これで7本目。
6番染色体は約1億6700万塩基対で構成され、これまで解読された染色体の中では最大規模。同研究所は他の動物と比較するなどして、1557個の遺伝子を特定した。癌や統合失調症、自己免疫疾患などに関連する遺伝子が含まれ、解読成果はこれらの病気の治療や予防に役立つと期待される。
英科学者グループの研究によると、薬を複合投与するカクテル療法により、エイズの致死率が80%以上低下したほか、現在こうした治療法を受けている患者は、10年あるいはそれ以上生存期間が延びる可能性がある。
こうした多剤併用療法(HAART)という治療法は1997年に導入されたもので、当初致死率がほぼ半減し、2001年までに80%以上低下した。
メディカル・リサーチ・カウンシル(MRC)のポーター医師は、「10人中9人が、感染年齢に関係なく10年生き延びられる」とし、データーが出揃っていないが、実際には17年〜20年生存する可能性があるとの見方を示した。
受精卵の核を他人の卵子に移植するというクローン技術に似た方法で不妊の女性を妊娠させる実験に中国・中山大のグループが成功、14日、米テキサス州での米生殖医療学会で発表した。
米ニューヨーク大の医師が開発した手法だが、安全性が未確認だとして米国では食品医薬品局(FDA)が人への応用を許可していない。今回の研究にはこの医師が共同研究者として名を連ねており、安全面や倫理面で批判が出そうだ。
研究グループが対象としたのは、卵子の細胞のミトコンドリアという小器官に異常があって、受精はしても妊娠できない30歳の女性。
体外受精させたこの女性の卵子から核を取り出し、別の女性の卵子の核と入れ替えた。この受精卵3個を不妊女性の体内に戻し、2個の受精卵の妊娠に成功した。だが24週目と29週目に流産したという。
米テキサス州ダラスの小児医療センターは12日、頭部が結合したエジプト人の双子兄弟(2つ)の分離手術に成功したと発表した。
同センターの担当医師によると、26時間に及んだ手術の最大の難関は複雑に絡んだ2人の脳内血管の処置だったが無事終了。容体は安定している。
双子はアハメド・イブラヒムちゃんとモハメド・イブラヒムちゃんで、2001年6月にエジプト南部の村で生まれた。その後、ダラスにある支援基金の協力で昨年6月、同地に搬送。センターは、手術には50〜60人の医師やスタッフが必要としていた。
温州ミカンやイヨカンなどの果肉を包む袋状の薄皮に、脂肪を分解したり、体内への吸収を抑える効果があることがポンジュースを製造している「えひめ飲料」(松山市)と辻田隆広愛媛大助教授(生化学)らの共同研究で9日までに分かった。
愛媛大などによると、薄皮に含まれるペクチンには、消化酵素に働き掛けて脂肪の吸収を抑制する効果が知られているが、薄皮そのものにはペクチンの約10倍の効果が確認された。また、ラットの脂肪細胞を使って薄皮の脂肪分解作用を調べたところ、強い分解作用が確認されたという。
新型肺炎(SARS)の患者には、プロテアーゼ阻害剤というエイズ治療薬を優先すべきだと、香港中文大のデービッド・ホイ准教授がウィーンで開催中の欧州呼吸器学会で9月30日、発表した。
香港のプリンス・オブ・ウェールズ病院で、当初は有効と考えられたリバビリンというC型肝炎治療薬を使った138人の患者のうち、8割以上は全く効果がなかった。その後、ステロイドの大量投与をしたところ、9割の人には何らかの効果があった。
一方、早くからプロテアーゼ阻害剤を使った患者で死亡率は極めて低く、第一の選択肢にしたという。
英国の研究者は、発症、入院時期などの分析から、1人の患者から2・5−3人が感染。そのうち半分以上は病院で起きていることから「病院での感染拡大を早く抑えることが重要で、こうした特徴をとらえれば、ワクチンや治療薬がなくても対応できる」と述べた。
子宮癌を起こすとされるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が、10代の女性に広がっていることが29日までに、名古屋市立大の鈴森薫教授(生殖・発生医学)らの調査で分かった。
これまでに50人中20人から悪性度の高いHPVが検出され、さらに症例数を増やして調査中。同教授は「感染率が高く、心配される結果」と話している。
HPVは主に性交渉で感染する。同教授らは、性交渉の低年齢化とともに若年者に子宮癌が増えるとみて、早期発見、診断の必要性から実態を調べることにした。
調査は、性感染症検査のため開業医などに来院した10代女性らが対象。HPV感染の有無のほか、ウイルスの遺伝子を調べ、子宮癌との関連性が高い悪性タイプかを確かめている。
目の水晶体(レンズ)が濁って物が見えにくくなる白内障が起きる仕組みを、長田重一・大阪大教授(生化学)らが解明した。国内の白内障患者は145万人。新たな治療法の開発に役立つと期待される。28日発行の英科学誌「ネイチャー」に掲載された。
水晶体は透明な細胞でできている。この細胞には、大部分の細胞に存在するDNAなどの内部構造物が存在しない。研究グループは、細胞が成長していく過程で核などが消失する仕組みがあると考えた。どのような酵素が働いているか調べたところ、「DLAD」という酵素が活発に働いていることが分かった。
マウスで、この酵素を作る遺伝子を壊したところ、DNAが除去されずに水晶体が白濁、光の透過力が大幅に低下することを確認した。DLADはヒトの水晶体の細胞にも存在し、先天性の白内障患者では、その遺伝子に欠陥を持つ可能性がある。
メキシコや米国南西部の砂漠地帯に生息する「ヒーラ・モンスター」と呼ばれるドクトカゲの唾液中に見つかったホルモンがタイプU型の糖尿病の治療に有望だとの報告がパリで開催中の国際糖尿病学会で行われた。ヒーラ・モンスターは米国では唯一の毒を持つトカゲで、米国のアミリン製薬、イーライ・リリー製薬の2社の報告によると、このホルモンはタイプU型糖尿病患者のグルコースの血中濃度と体重を顕著に低下させる効果があった。
タイプU型糖尿病は、体が十分なインシュリンを作らないか、インシュリンに対して適切に反応しない病気で、世界中、約1億9400万人がかかっており、多くの場合、肥満症を引き起こす。放置すれば、死に至る合併症につながる恐れがある。
発見されたホルモンは「エキセンディン4」と呼ばれ、糖分のレベル上昇に対応してインシュリンを生産するよう体を刺激するとともに、食欲を抑制するという。
このトカゲの神経毒は、人間にとり致死性のものではないが、1950年代のSFホラー映画「ジャイアント・ヒーラ・モンスター」のおかげで恐ろしい生き物にされた。ヒーラ・モンスターは絶滅危惧種に指定されている。
急性のB型肝炎が治ってからも長年、原因のウイルスが肝臓に残り、血中にも出てくることが、国立病院大阪医療センターなどの研究でわかった。
B型肝炎ウイルスは、大人になって感染した場合は慢性化しないのが常識とされ、急性の症状が治って半年以上たてば献血も再びできる。研究チームは「本人の健康に悪影響を及ぼす可能性は低いが、輸血感染の原因になる恐れがある」と指摘しており、献血の安全管理体制に大きな影響を与えそうだ。
B型肝炎は、免疫の正常な大人は通常、ウイルスを攻撃する抗体が体内にでき、慢性化せずに治る。その後は再感染しない。
ところが、同センター消化器科の結城暢一医長らが、発症から約2年から9年半たって肝機能が正常に戻った急性B型肝炎の元患者14人を再検査した結果、3人の血液からB型肝炎ウイルスが見つかった。
さらに、3人のうち2人を含む9人からは、肝臓の組織も採取して調べたところ、全員からウイルスが見つかった。うち7人は軽い炎症も続いていた。
日本赤十字社が行う献血の安全検査では、B型肝炎ウイルスが血液1 ml 当たり1000〜2000個程度ないと検出しにくい。しかし、同50個以下とみられる微量のウイルスでも、感染して死亡した例がある。今回、元患者3人から見つかった血中のウイルス量は、それぞれ同 770、1,300、24,000 個のため、2人の分は献血されると検査をすり抜け、輸血感染する恐れがある。
B型肝炎ウイルスは、治った後も肝臓に残る例が近年報告されていたが、調べた9人すべてで残存を確かめたのは初めて。
また、ウイルスは免疫に抑え込まれてあまり増殖できないため、これほど血中に現れるとは考えられていなかった。
飲酒常習者は、健康な人よりも高い割合で歯周病や齲蝕、前癌性病変を発病しやすいことが、ニューヨーク州立大学バッファロー校の研究チームにより明らかにされた。
その結果によると、85%は歯牙及び口腔状態が「普通」または「悪い」で、82%は中度〜重度の歯肉の炎症が見られ、3分の2に多量のプラークが認められた。また、15%に歯牙喪失が認められるが、残存歯の41%がエナメル質欠損を示していた。さらに、79%が1歯以上の齲蝕を有し、平均すると齲蝕は一人当たり3・2歯にのぼり、3分の1は前癌性病変を有していた。
研究結果は、いずれも健常者に比べて、飲酒常習者の方が高い割合で、口腔疾患を発病することを示している。
大阪大と独立行政法人物質・材料研究機構などの研究グループが、骨腫瘍の手術などで失われた部分に骨を再生させたうえ、元通りの強度を持たせる材料を初めて開発した。既に臨床試験で有効性と安全性を確認、高齢者に増えている骨粗しょう症など幅広い病気の治療に応用できるという。今秋にも実際の治療で使い始める。
就寝前の入浴は、寝入るまでの時間を大幅に短縮し、しかも深い眠りを睡眠全体の最初の時間帯に集中させるなど「睡眠の質」を大きく改善させる効果があることが、足利工業大工学部の小林敏孝教授(睡眠学)らの研究で分かった。一般に「寝る前に風呂に入るとよく眠れる」といわれてきたが、小林教授らは脳波を測定するなどして科学的に証明した。
小林教授は99〜01年、20〜25歳の健康な男子大学生5人を対象に、入浴した時としなかった場合に、睡眠がどのように異なるのかを調べた。
実験条件は、就床が午後11時半〜午前0時半、起床が翌朝午前7〜8時。入浴は午後8時または同9時半から、風呂の温度は42度、40度、38度の3通りに設定、入浴スタイルは自由とした。体内の温度を正確に測るため5人の直腸に特殊な温度計を入れ、24時間モニタリングした。睡眠中は脳波を分析。1人につき1か月以上かけて調べた。
その結果、入浴した時はしなかった時に比べ、就床してから睡眠に入るまでの時間がいずれも短縮した。しかも3分の1〜6分の1とかなり短くなった。入浴しない場合に寝つくまで1時間半かかった人が20〜30分で、30分かかった人が5分で眠ったケースもある。
深い眠りを指す「徐波(じょは)睡眠」が、入浴した場合は睡眠全体のうち最初の3分の1の時間帯に50〜60%以上、集中して表れることも判明。入浴しなかった場合は40%以下にとどまり、「寝る前の入浴が、早く深い睡眠をもたらす」ことを示した。
こうした傾向は、午後9時半の入浴よりも同8時の方が顕著だった。お湯の温度に関係なく、「体温が0.5〜1度上がる入浴」が、最もよい睡眠になったという。就寝時の体温よりも、一度体にたまった熱を放散する過程が、寝つきと深く関係しているらしい。
シャワーでも適度に体温が上がれば良いという。一方、2度以上体温が上昇すると神経が興奮するため逆効果という。
小林教授は「ぬるめのお湯に30分くらいがだいたいの目安だろう。寝つきが悪いなど睡眠で悩む現代人にとって朗報だと思う」と話している。
● 徐波睡眠 睡眠は、身体の眠りである「レム睡眠」と、脳の眠りの「ノンレム睡眠」を約90分のサイクルで繰り返している。このうち「ノンレム睡眠」は脳波の波の形などで4段階に分けられ、第3、4段階の大きくゆっくりした波(徐波)を出す状態を「徐波睡眠」といい、深い眠りが得られていることを示す。
血液の癌である慢性骨髄性白血病(CML)に、骨粗鬆症治療薬が効く可能性が高いことを、京都大病院輸血細胞治療部(部長・前川平教授)の木村晋也助手らの研究グループが、マウス実験などで突き止めた。
臨床応用が残されているが、既存のCML治療薬と併用すれば、より高い効果が出るとみられ、難病治癒への期待が高まっている。研究成果は9月発行の米血液学会誌に掲載される。
CMLは骨髄内の造血幹細胞(白血球など血液細胞の元になる細胞)が癌化して白血球などが異常増殖する難病。発症率は10万人に1人程度で、40〜50歳代に多い。白血病細胞を劇的に減らす分子標的薬「グリベック」があるが再発の報告もあり、有効な併用薬が世界的に研究されてきた。
ヒトゲノム計画による人間の全遺伝情報の解読が今年4月に完了したことを受け、政府は次の目標として、遺伝子から作られ、実際に生命活動を支えている多様なタンパク質の相互作用の解明を国家規模で進める方針を24日までに固めた。
副作用がなく、より効果的な次世代の医薬品の開発にもつながる。他国に先駆けてデータを取得している2万−3万種類のタンパク質間の相互関係を5年間で解明するのが目標。文部科学省は来年度予算の概算要求に100億円前後を盛り込む。
ヒトゲノム計画では日米欧など6カ国が共同で、4種類の塩基で記された人間の遺伝暗号を解読。遺伝子は計算上、約3万2000個と突き止めた。
これらの遺伝子で作られるタンパク質は、別の遺伝子を働かせるスイッチの役を果たして異なるタンパク質を作らせたり、複数が一緒に働くなど、生体内で複雑に連携しながらさまざまな経路をたどり、最終的に必要な物質を作ったり、病気を発症させたりしている。
甘味料や生薬として使われる「甘草」の主成分「グリチルリチン」が、SARSの治療薬として有望なことを、独フランクフルト大が発見した。SARSウイルスに効果のある薬剤が確認されたのは初めて。
グリチルリチンは抗ウイルス薬としてエイズやC型肝炎の治療に使われており、研究者らは「副作用が少ない薬で、効果的な治療につながる」と期待している。この成果は14日付の英医学誌「ランセット」に発表された。
同大は、SARSウイルスをサルの細胞に感染させ、5種類の抗ウイルス薬を加えて効果を調べた。その結果、グリチルリチンは、副作用のほとんど出ない量でも、ウイルス増殖を抑制でき、安全な治療薬として有望なことがわかった。
ほかの2剤は細胞を殺す濃度とウイルスを抑える濃度の差が少なく、副作用の危険が大きかった。また香港でSARS治療に多用されたリバビリンなど2剤は、治療効果が全く見られなかった。
金属や漆などが皮膚に付いてかぶれるアレルギー性接触皮膚炎に、体内の生理活性物質「プロスタグランジンE2(PGE2)」が深く関与していることを、京都大大学院医学研究科の椛島(かばしま)健治助手と成宮周(なるみや・しゅう)教授らの研究グループがマウス実験で突き止めた。かぶれの発症メカニズムを、細胞レベルで解明したのは初めて。論文は12日発行の米科学誌ネイチャー・メディスンに発表された。
漆などのアレルギーの抗原が皮膚に付くと、皮膚の下にある免疫細胞「ランゲルハンス細胞」がリンパ節に移動して、異物を攻撃する免疫細胞の一種のT細胞を必要以上に作り炎症になる。この過程は分かっていたが、同時に体内で大量に作られるPGE2の働きは、解明されていなかった。
椛島助手らは、ランゲルハンス細胞の表面にある膜蛋白に着目。遺伝子操作でPGE2にくっつく4種の膜蛋白のうち、四つ目のEP4を持たなくしたマウスの耳に漆を塗ってアレルギーの腫れを観察したところ、普通のマウスに比べ、腫れが3分の1程度にとどまった。こうしたことから、PGE2がEP4と結合してT細胞を生産し、かぶれが生じることが証明された。
椛島助手は「PGE2の刺激を防ぐ頭痛用飲み薬は既に市販されているので、今回の研究成果を応用すれば、接触皮膚炎の塗り薬が開発できるだろう。慢性のかぶれが原因のアトピー性皮膚炎の治療につながるのではないか」と話している。
1948年以来55年ぶりとなる新種のビタミンを、理化学研究所の加藤忠史チームリーダーらのグループが確認した。
マウスの実験では、欠乏すると毛並みが劣化したり、親がきちんと子を育てない行動異常を起こしたりし、人間でも重要な役割を果たしているとみられる。この発見で、ビタミンの種類は計14となった。成果は24日発行の英科学誌ネイチャーに掲載される。
この物質は「ピロロキノリンキノン(PQQ)」という有機化合物で、様々な食品に含まれ、納豆、パセリ、ピーマン、緑茶、ウーロン茶などに多く含まれるという。
PQQそのものは1979年に米国人研究者が発見していたが、加藤さんらは、そううつ病にかかわる遺伝子の研究中、動物細胞内でアミノ酸の分解に必要な酵素の遺伝子を発見。この酵素はPQQと結合しないと働かないことがわかり、「代謝に重要な物質」など、ビタミンの定義を満たすことが確認された。
餌から除去してマウスを育てると、体毛に脂気がなくなったり、1回に出産する子の数や成長できる個体数が減るなど繁殖力が落ちたりすることが知られている。人間への影響については、PQQ欠乏例を収集中でまだ解明されていないが、加藤さんは「マウス同様、重要な役割を果たしているはず」と話している。
● ビタミン 生物の体内では作り出せないが、微量でも健康維持には欠かせない物質。後の理研主任研究員、鈴木梅太郎・東京帝国大学教授が1910年、かっけを防止する成分(後のビタミンB1)として世界で初めて発見した。日本人の発見は今回が2例目。
癌患者が最新、最適の治療法を選択できるようにするため、国内の癌関連24学会が進行度、悪性度ごとにきめ細かな標準治療法のデータベースを作り、今春からインターネットで公開する。癌の治療の選択は医師の経験が頼りで、病院によって治療成績に格差が出る原因と指摘されている。標準治療の公開で、患者が主体的にかかわった治療方針の選択が可能となり、治療の質向上にもつながると期待される。
データベースは、日本癌治療学会の専門委員会(委員長=佐治重豊 岐阜大教授)が中心となり、胃癌や肺癌、乳癌などの専門学会のほか、緩和ケア、医薬品副作用情報にかかわる学会など計24学会が協力して作る。
欧米などで新たに効果が証明された治療法や薬剤の情報に、日本人の体質を加味し、効果が判断される。患者がアクセスして、部位、進行度、転移の有無などを答えていくと、最も生存率が高い治療法の候補がわかる。根拠となった医学論文も見られるようにする。
データベースは、まず情報がまとまった部分から医師に対して公開され、実用性をチェックした後、一般向けに公開される。
現在、国内の癌治療は、病院ごとに治療法が異なり、治療成績にも大きな格差がある。同じ進行度の胃癌治療を、癌専門病院や大学病院などで治療を受けた場合でも「5年後の生存率は46〜78%と大きな開きがある」との学会報告もある。このため、標準治療を学会が示すべきだとの指摘が、専門医の間からも出されていた。
緑茶ポリフェノール(polyphenol)入り保存液を用いることで、膵臓(pancreas)でインスリン(insulin)を分泌する「膵島(islets of Langerhans)細胞」の保存時間を従来の2時間から48時間まで延ばすことに成功したと、京都大医学部付属病院の松本慎一・臓器移植(organ transplantation)医療部助手が5日、発表した。膵島細胞の移植は小児糖尿病などの有効な治療法として注目され、国内外で脳死移植が行われている。膵島細胞は短時間で死滅するため、米国では摘出後2時間以内の移植が目安とされている。
松本助手の実験で従来の保存液では48時間で約75%が死滅したが、ポリフェノールを含む保存液では約80%の生存が確認できたという。
高圧送電線や家電などから出る超低周波(50〜60Hz)の電磁波を高いレベルで浴び続けると、小児白血病の発症頻度が倍増する可能性があることが分かった。国立環境研究所と国立癌センターの研究班が、WHO(世界保健機関)の国際電磁波プロジェクトの関連研究として実施した国内初の疫学調査で判明した。
調査対象は、15歳以下の健康な子ども約700人と白血病の子ども約350人。子ども部屋の電磁波の強さを1週間続けて測り、家電製品の使用状況や自宅と送電線の距離なども調べて、電磁波と病気の関連を見た。
その結果、子ども部屋の電磁波が平均0.4マイクロテスラ以上の環境では、白血病の発症頻度が2倍以上になることが分かった。通常の住環境での電磁波は、平均0.1マイクロテスラ以下。携帯電話や電子レンジから出るのは、違う周波数帯の高周波の電磁波だ。
電磁波と小児白血病の関係は70年代から指摘されてきた。WHOの国際癌研究機関(IARC)は、79年以降の9つの疫学調査結果や各国の研究結果を再検討し、01年、「0.4マイクロテスラを境に発症の危険が倍増する」との結論を出した。しかし、1) 脳腫瘍や他の癌の増加はみられない; 2)動物実験では発癌性の増加は認められない、とも指摘し、危険か安全かの議論は決着していない。日本には電磁波を浴びる量を制限する規制はない。研究班によると、0.4マイクロテスラの環境にさらされているのは、日本では人口の1%以下とみられる。
アルツハイマー病患者の脳にβアミロイドが蓄積することがよく知られる。そして、βアミロイドが脳内に蓄積し、'老人斑'として現れる。研究結果によれば、培養脳細胞(グリア細胞)にβアミロイドを添加すると、神経の伝達物質(グルタミン酸)が横取りされて、神経伝達の効率が6割も落ち込むという。つまり、βアミロイドが神経伝達を阻害することが分かった。
この遺伝子は主に消化器の上皮細胞に存在し、機能が停止した場合、胃の自然細胞死がなくなり、癌細胞が急激に増殖するという。使った動物はマウス。動物の特定遺伝子を破壊し、現れた影響から遺伝子の機能を推定するという手法を用いた。